イメージ(写真提供:photo AC)
文化庁の生活文化調査研究事業(茶道)の報告書によると、茶道を行っている人が減少する中、平成8年から28年の20年間で70歳以上の茶道を楽しむ人は増加し続けているという。人生100年時代の到来で、趣味や習い事として茶道に触れる機会が増えていると考えられる。そんな中、68歳にしてお茶を習うことになった、『かもめ食堂』『れんげ荘』などで人気のエッセイスト・群ようこさん。群さんが体験した、古稀の手習いの冷や汗とおもしろさを綴ります。茶道の魅力に夢中になっていくものの、覚えることの多さに失敗も続く群さん。それでも、恥をかくのもお稽古のうちと、諦めることができるようになったのは――。

人前で恥をかく

とにかく茶道に関しては、何も知らないので、習っていそうな周囲の人に片っ端から聞いて、情報を得ようとした。

ある人は興味があって、一度、椅子に座り、テーブルでお点前をする「立礼(りゅうれい)」のお稽古を体験入学した経験があるが、先生が好きになれそうにもなかったので、お稽古に通うのはやめたといっていた。人との相性はあるので、それは仕方ないだろう。

 

茶道とは一見関係なさそうな、パンキッシュなファッションの人が、中学、高校と習った経験があったり、いかにも習っていそうな、きちんとした立ち居振る舞いの人が習っていなかったりして面白かった。その彼女は、

「他の人が見ている前で、恥をかくのはいやだ」

といった。マンツーマンではなく、他の誰かが同じ室内にいて、じーっと自分たちのことを見ているというのがどうしてもいやだという。お稽古事というのは、先生と一対一で習うのも大切だが、他の方が習っている様子を知るのもとても重要だと思う。