地方都市あるある

年を取った後、地震などの災害時にエレベーターが使えなくなっても困らないように、階数は2階か3階を希望しました。築古物件を数百万円で購入して部分的にリフォームしようと、リフォーム代もある程度、覚悟していました。

老舗の不動産仲介業者に仲介を依頼し、物件が出るたび内見に行きました。メーンの駅前、繁華街の近く、官公庁街、古くからの町並みのエリア、……。住宅街にあるマンションも見ました。でもやっぱり、住宅街じゃ、免許証を返納したら生活できそうにありませんでした。

駅周辺でも、いまのマンションと逆側のエリアも見ました。でもスーパーや商店、クリニック、それに実家にも、(徒歩数分の差ではありますが)遠くなります。やっぱり、いま住んでいる辺りが魅力的でした。

10戸近く見ましたが、良い物件には出会えませんでした。「地方都市あるある」でしょうが、そもそもワンルームや1DK、1LDKといった単身者向けのマンションが、この市にはあまり建築されていないのです。

写真提供◎photoAC

東京からの転勤族だって、単身赴任より家族帯同のほうが多く、マンションも家族持ち用の2LDK、3LDKが主流です。栄子さんの希望に合った1LDKは在庫が少なく、ゆえに比較的、強気の価格帯です。予算内の物件はなかなか市場に出てきません。

そのうち、1LDKだけでなく、1DKや2DKも見始めました。ある2DKの物件では、「2部屋をつなげて、1LDKにリフォームして住めばいいか」と思いました。ところが内見後に担当者が、「このマンション、自殺があったんです」とぽつり。当該住戸ではありませんが、と言われましたが、衝撃発言です。

栄子さんは内心、「きゃ~。イヤ~!! そんなの絶対買わないわよ~!」。動揺を見せないように、「そ~ですか~」と応えましたが、もちろん断りました。別の物件では、内見後、「ここにしようかなあ」と迷っているうちに、「売れてしまいました」と連絡が来ました。