(写真提供:読売新聞社)
2023年シーズン、阪神タイガースは1985年以来、実に38年ぶりの日本一に輝きました。「ミスタータイガース」の愛称でファンに愛され続ける掛布雅之さんは、ここまでの阪神の歩みをどのように振り返り、現在の球界をどう捉えているのでしょうか? その著書『虎と巨人』から一部を紹介します。

日本一の2年後から始まった暗黒時代

阪神は1985年に日本一になったあと、本当なら黄金時代を築くべきでした。

当時の吉田義男(よしお)監督もそのつもりでした。「昭和50年代は広島の時代(リーグ優勝4度)だった。昭和60年代は阪神の時代をつくる」と言っていましたから。1985年は昭和60年です。私たちも60年代はタイガースの時代をつくる自信がありました。

暗黒時代への入り口は日本一翌年の1986年にありました。フロントも含めて慢心があったのかもしれません。

大きな補強もなくスタートしたシーズンは大きなアクシデントがありました。エースの池田親興(ちかふさ)が故障で4勝止まり。

何より、四番の私が4月20日に死球で左手首を骨折。復帰後も打撃のリズムを取り戻すことができませんでした。

バースは2年連続三冠王となる活躍を見せましたが、前年のようなクリーンアップの爆発力はなくなり、3位でシーズン終了。そして、そのバースも長男の病気が原因で翌年の87年に退団。日本一からわずか2年後の1987年に最下位に沈んでしまいました。

野球にケガはつきものですし、死球そのものには恨みはありません。でも、あの死球は私のその後の野球人生だけでなく、阪神の歴史にも影響を及ぼしたのです。