ビデオ通話できわどい会話も

実は私には、5年のつきあいになる「彼」がいる。彼の存在は子どもたちも知っている。彼はバツイチで現在は独身。不倫ではないのだから世間に遠慮することもない。けれど、艶やかな「大人の会話」は、やはり他人には聞かれたくない。メールがあるとはいえ、直接電話で話したいときもある。

子どもと同居していた頃は、こそこそ自分の部屋へ行って電話をかけることもあった。が、今はいつでも自由にできる。このコロナ下ではデートもままならないが、ビデオ通話で顔を見ながらきわどい会話ができるのは、私の秘密の楽しみである。

「再婚しないのか」と友人から聞かれることがあるが、いつも否定している。寂しさを感じるときなどは、彼と寄り添ってテレビを見ながら笑えるような暮らしをしてみたいと思う。お互い独身だから結婚に支障はない。

だが、まがりなりにも20年の結婚生活を経験し、誰かと暮らすことがどういうことかわかっている。今さらあこがれはない。ましてやこれから結婚となれば、すぐ「介護」になってしまうだろう。夫の看病を10年してきた身としては、もう誰かの人生に責任を持ちたくない。たまにデートしたり、旅行したりと「夫婦ごっこ」を楽しめればそれで十分だ。

逢瀬という非日常のためにエステに通ったり、ダイエットや筋トレなどにも精が出る。今はいっしょに出かけるのが難しいけれど、その分、会えたときの喜びは増す。たまに会うから、気を使ってあげられるし、それが生きる励みにもなっている。

「彼」との関係こそ、私のひとり暮らしの最大の秘密の楽しみなのである。


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