エッセイストの酒井順子さん(左)と柔道家でJOC元理事の山口香さん(右)(撮影:洞澤佐智子)
エッセイストの酒井順子さんが、世の中の気になるアレコレをゲストに学ぶ対談連載が現在発売中の『婦人公論』2月号からスタートします。初回にお迎えしたのは、柔道家で日本オリンピック委員会(JOC)の理事を10年間務めた山口香さん。2月に開催される北京冬季五輪を前に、オリンピックやスポーツ界の課題を聞きました。リニューアル第1号となる本誌から特別に全文を公開します(構成=福永妙子 撮影=洞澤佐智子)

女性軽視発言と問題の本質

酒井 2021年に開催された「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」(以下、東京五輪)では、本当にいろいろな問題が勃発しました。なかでも新型コロナウイルスの感染拡大は深刻でしたが、山口さんはJOC理事の中でただ一人、開催に懸念を表明なさっていましたね。

山口 スポーツ関係者の私が開催を危惧することに対し、「なぜ」と思った人もいたでしょうね。

酒井 委員会の中でバッシングなどはありませんでしたか?

山口 なかったです。というか、議論にすらならない(笑)。「スポーツ界は一枚岩なんだ」という暗黙の何かがあるのでしょうね。でも今回のコロナ下での開催は、命にかかわる問題で、懸念材料が多かった。議論する価値はあるし、「議論を尽くしました」と示すことも大事なことだと思うんですけれども。

酒井 そうですね。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会・前会長の森喜朗さんの「女は話が長い」といった発言も問題になりました。委員会や会議で、女性の意見を封じるような空気はあったのでしょうか?

山口 女性の発言だから、ということではないですが、異なる意見を取り上げて議論しましょう、という雰囲気にはなっていないですね。