テレビに向かって「霧島、頑張れ!」と叫んだ

逸ノ城はスピード出世し、新入幕で13勝2敗をあげ、関脇までのぼり、将来の横綱として期待された。しかし、その後はヘルニアによる腰痛と体重のコントロールに苦しみ番付を下げ、47場所でついに幕内最高優勝を手にした。土俵下で行われるNHKアナウンサーのインタビューでは、いつもと表情が変わらず、言葉を探すように話す。その姿に、無口でインタビュアー泣かせの昔の力士を思い出した。逸ノ城は先場所コロナ感染で休場したため、その分を今場所に出そうと思ったそうだ。

優勝賜杯を渡したのは、陸奥事業部長(元大関・霧島)。千秋楽恒例の協会ご挨拶は八角理事長(元横綱・北勝海)が行ったものの、八角部屋の前頭7枚目・北勝富士のコロナ感染によって表彰式に出られないため、陸奥事業部長が代理を務めた。

力士の頃の精悍さを思い出し、テレビに向かって「霧島、頑張れ!」と叫んだが、表彰状を間違えずに読むのに必死の様子。その後の内閣総理大臣杯の時は、他の親方と共に土俵を降りてよいものかと戸惑っていて、表彰式にも今場所の混乱がにじみ出ていた。

見ているほうの戸惑いは、十両と幕内の土俵入りだ。円形に並んだ時、これまでぎっしり並んで挙げた腕がよくぶつからないものだと感心していたが、今場所後半は出場力士が少なくなり、隙間があいていた。土俵入りのソーシャルディスタンスは寂しすぎる。