第一線で活躍した女性の
遺骨のゆくえ

そんなことを考えていたときに、印象深かった記事を思い出しました。2022年12月、『朝日新聞』で6回にわたり連載された「『無縁遺骨』を追う」。その第2回に、昨年88歳で亡くなられた皇室ジャーナリストの渡辺みどりさんのことが書かれていました。「完璧のはずだった渡辺みどりさんの終活20年かけた遺言の想定外」というタイトルでした。

渡辺さんは1934年生まれで、私より2歳下。日本テレビ公募1期生として入社され、テレビ界で働く女性の草分け的存在でした。エグゼクティブ・プロデューサーになり、定年退職してからは皇室ジャーナリストとして活躍されたので、テレビなどでご覧になった方も多いのではないでしょうか。テレビ局がまだまだ男社会だった時代から仕事をなさっていた渡辺さんには、尊敬の念を抱いていました。何度か仕事の場でお会いする機会がありましたが、さっぱりしているのに物腰は柔らかく、とても素敵な方でした。

記事によると、親類縁者がほぼいない渡辺さんは、50代から終活の準備をされていたとか。公正証書遺言もちゃんと作っており、遺言執行者や遺産管理人も決めておられました。ところが実際には、死後の手続きは遺言通りに進まなかったそうです。

というのも、自宅でおひとりで亡くなっていたため行政解剖に。本人はもしものことがあった場合、遺体は大学病院に献体してほしいと願っていましたが、行政解剖されると献体はできない決まりになっているとか。

さらに遺言には、遺骨やお墓についての指示がなかったとのこと。遺書に書かれていない場合、民法では納骨やお墓の管理は祭祀承継者である親族の役目と決められているため、遺言執行者や遺産管理人がどうするか決めることはできない、とあります。私もこの記事を読んで初めて知りました。

(イラスト=マツモトヨーコ)