(写真提供◎illust AC)
NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長の樋口恵子さんによる『婦人公論』の新連載「老いの実況中継」。90 歳、徒然なるままに「今」を綴ります。第5回は、【お墓問題は悩ましい】です──。 (イラスト=マツモトヨーコ)

将来のことを考え、
ようやく墓じまいに着手

一昨年、私の実家(柴田家)の墓じまいに着手しました。私には娘が1人いますが、未婚で子どもはいないので、将来的にお墓の面倒をみるのは難しいでしょう。ですから、元気なうちにお墓問題を解決しておかなければ、と思ったのです。

そのお墓には私の父母と、私が生まれる前に亡くなった姉、若くして亡くなった兄など5つの遺骨が納められていましたが、それらを跡取りが途絶えた人のための供養塔に移すことに。お寺さんとは話がまとまったものの、実際に移すのはこれからです。今のところ私もそこに入れていただく予定ですが、まだ自分のぶんの費用は納めておりません。

私はどうやら男性運には恵まれているようで(笑)、最初の夫はイケメン、次の連れ合いもなかなか素敵でした。若くして亡くなった最初の夫は、生家の墓に入りました。次の連れ合いは、70歳になる直前に亡くなりましたが、生前、自分の手で先祖代々の墓じまいを完了。ところが自分自身の墓をどうするかは決めないうちに逝ってしまったので、合同墓に納めることにしました。

あの世に行った後、どちらのお骨の側にいたいのかと問われたら、正直返答に困ります。こちらを立てればあちらが立たず、「嫉妬されて《弔い合戦》が起きたらどうしよう」などとらちもないことを考えて、ひとりでニヤニヤしたり。「ごめんなさい、もめないように両親と一緒のお墓に入りますね」と決めた次第です。でも本心を言うと、ときどき《千の風》にでもなってふわふわ抜け出し、あっちに行ったり、こっちに行ったり。「あなた、あの時は楽しかったわね」などと語り合いたいものです。