(写真:丸山ゴンザレス)

 

ジャーナリストの丸山ゴンザレスさん。危険地帯や裏社会を主に取材し、現在はテレビに加えてYouTubeでも活躍中です。その丸山さんに欠かせないのがタバコ。スラム街で買ったご当地銘柄、麻薬の売人宅での一服、追い詰められた夜に見つめた小さな火とただよう紫煙…。旅先の路地や取材の合間にくゆらせたタバコの煙がある風景と、煙にまとわりついた記憶のかけらを手繰り寄せた丸山さんの異色の旅エッセイ『タバコの煙、旅の記憶』より「ケニアで出会った景色」を紹介します。

ミギンゴ島を訪れた時のこと

ケニア、ウガンダ、タンザニアにまたがるビクトリア湖。

アフリカ最大の湖には大小多くの島がある。テレビ番組の企画でケニアを訪れたついでにどうしても行ってみたかった場所のひとつ、ミギンゴ島を訪れた時のことだ。

本土からミギンゴ島までは2時間ほどかかる。実は、この島の位置が非常に厄介な状況にあった。俺たちはケニア側から入ったが、隣接するウガンダも領有権を主張しているのだ。

念の為、ウガンダ政府にも入島の許可は取っていた。だが、担当者から気になることを言付かっていた。

「島では常駐する警察の判断に従ってください」

政府の発行する紙(パーミッション)よりも、現場判断が優先される。そんなことがまかり通るのがアフリカなのだ。土の色や路面状況なんかでアフリカを感じている場合ではなかった。

サッカーコートの四分の一ほどのサイズの島は、へばりつくようにトタンで作られた小屋が密集している。「地球外の風景」「宇宙のどこかの星の風景」と言われても信じてしまう。

上陸した俺たちを待っていたのは、そんな場所に似つかわしくない人間関係、国家間のいざこざだった。

双方が領有権を主張していることは許可を両国に求める程度には承知していたので、取材を始める前、最初にケニア警察へ挨拶に行った。特に問題もなく、むしろ歓迎された。彼らが同行してウガンダ警察へと赴く。