ストーリーは、ポーシャに思いを寄せるバサーニオは求婚したいが金がなく、アントーニオに頼るのだが、たまたまアントーニオの財産は船の上。そのためにアントーニオがシャイロックに一時的に金を借りる…という展開だ。アントーニオと確執のあるシャイロックは「貸した金を返せなかったら、あんたの体からきっかり1ポンド、切り取らせてもらう」との条件を提示。バサーニオは友の体を案じて止めるが、アントーニオは承諾、ところが、彼の財産を積んだ船が座礁するという悲劇に見舞われる。
シェイクスピアの「長い台詞」を、それぞれが熱く語りながらオーバーアクションでそ演じていく様に引き込まれるが、主演である草なぎは、なかなか登場しない。バサーニオとアントーニオ、ポーシャなど、主要な登場人物がストーリーを展開した後に、いよいよ長椅子から立ち上がって前に出てくる。全身から「不機嫌」を漂わせながら…。
白髪交じりの草なぎは、クラシカルなスーツに身を包み、ときに顔をゆがめながら「冷徹で皮肉屋の高利貸し」シャイロックを熱演。バラエティやCMで見せる穏やかで温かい人物像とは全く違う「狂気」をまとい観客を魅了した。一方で、愛する娘が異教徒と駆け落ちしたと知る場面では、父親としての悲しみや怒りを見事に表現してみせた。
忍成は、友人には善良だが、シャイロックを軽蔑するアントーニオを品の良いスーツ姿で淡々と表現。野村は、印象的な紫の上下のスーツ姿で、長い黒髪で明るくバサーニオを好演した。佐久間は、腰回りに特徴のあるロングのワンピースでそのスタイルの良さ、立ち姿の美しさが舞台で際立っていた。美しくて聡明な令嬢・ポーシャが、次々やってくる求婚者の男たちをあしらうくだりは笑いを誘う。一方で、ポーシャにかしずく侍女・ネリッサを演じる長井は相変わらずの個性が爆発。2人のやりとりが見ていて楽しい。