ファッションアイコンとなるロイヤルファミリー

ファッションにとどまらず、育児やご趣味にいたるまで、世の女性の憧れを一身に集めた美智子さまのご様子は、マスコミがこぞって報道し、日本の経済復興を加速させる契機にもなりました。同様のことは、海外でも見られますね。

イギリス王室でいえば、かつては故・ダイアナ元妃がファッションアイコンでしたが、現在その役目をキャサリン妃が受け継いでいます。時に、比較的リーズナブルな価格帯のドレスも上手に取り入れる彼女のスタイリングは、いま最も世界の注目を集めるロイヤルファッションと言えるのではないでしょうか。

昨年、私はベルギー王室の血をひく名家、ドゥ・リーニュ家のプリンセス、アリックス・ドゥ・リーニュさんの結婚式に出席する機会がありました。ヨーロッパの貴族の結婚式に招かれるのは初めてでしたから、何を着ていこうかと、ブライダルファッションの第一人者である桂由美さんにご相談しての出席でした。

海外では、社交界の装いは雑誌で特集が組まれるほどの関心を集めます。アリックスさんの式でも、私は参列した多くのロイヤルファミリーや貴族のファッションに目を奪われました。

女性は趣向を凝らしたカラフルな美しい帽子。男性は昼用のモーニングを着用するのですが、なんとブルーのコーデュロイパンツやベストと合わせている方もいて、目から鱗が落ちる思いでした。日本で男性の正装といえば、黒系の色一辺倒ですからね。華やかな装いや色使いからも祝意が伝わることを知ったのは、素晴らしい体験でした。

このような、誰の記憶にも残る結婚式を提案したいと、2017年に『marie claire style mariage』という雑誌を創刊しました。美智子さまのご成婚は、まだ戦争の悲しみが癒えない時期に、夢や希望をもたらす出来事でした。私の父もそうした人々の寿ぎの思いを、デザインに込めたのでしょう。

ジュエリーの魅力は、身につけた人を美しく見せることだけではありません。たとえば母から娘へ、と受け継がれ、さまざまなストーリーを内包するところにもあります。父がデザインしたティアラは、34年の時を経て、美智子さまから皇太子妃・雅子さまに譲られました。

ご成婚の折、サイズなどの調整を施して再び輝きを放った時は、父も感慨深かったことと思います。いつの日か、またどなたかの頭上で輝く機会があるのでしょうか。楽しみに待ちたいと思います。