経済運営に不安も

「今の香港で起きていることは『2回目の返還』だ。中国側から見れば、今まで香港は本当の意味では返還されていなかった、中国になりきっていなかったということだ」=興梠氏

「現地では、監視カメラの記録を調べて、過去に民主化運動に参加した人が逮捕されているという話もある。一般の市民もそんな恐怖の下で暮らさなければならない状況だ」=阿古氏

飯塚今後の香港統治を占う上で、参考になるのは李氏の政権公約です。中には「土地・住宅の供給加速」といった経済関連の項目もありましたが、筆頭に掲げたのは「政府の統治能力強化」でした。これは「今後も強権をふるっていく」という宣言。北京に対する誓いといえます。

李家超候補の政権公約 どう見る?©️日本テレビ

吉田そんな状況下では、市民的自由を守る最後の砦としてメディアの役割が重要です。しかし、『リンゴ日報』廃刊が象徴するように、香港メディアは言論統制で徹底的に弾圧されています。「国境なき記者団」による今年の「世界報道自由度ランキング」では、世界180カ国・地域の中で、香港は前年の80位から148位に急落しています。香港返還から50年間認められるとされた「一国二制度」はもはや空文。香港の未来は暗いと言わざるを得ません。

「新行政長官は経済に関する経験がない。だからこそ専門家の意見を聞くのではないかという声もあるが、最終的に政策を決めるのはトップ。今後に不安はあるだろう」=阿古氏

吉田強権政治は国際金融センターとしての香港の地位を低下させる可能性もある。とりわけ、香港での反体制活動などを取り締まるため、中国政府が2020年に制定した国家安全維持法の影響は大きいようです。経済面での統制が進めば、有能な人材が香港の外に逃避していくことも考えられます。

大規模デモから”変貌する香港”©️日本テレビ

飯塚香港米国商工会議所が1月に発表した景況感調査では、国安法の影響として5割近くが「従業員の士気への打撃がある」と答えています。中国政府による人権弾圧の問題はウイグルやチベットにもありますが、香港の場合は強圧的な政治が経済的混乱を生み、ひいては世界全体に大きな影響を及ぼす恐れがあります。