ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
キリル・ペトレンコ(指揮)
チャイコフスキー:交響曲第6番《悲愴》

ベルリン・フィル・レコーディングス
3241円

驚きの声が上がったベルリン・フィルの首席指揮者

2019年8月にベルリン・フィルの首席指揮者に就任した、キリル・ペトレンコ。自らの演奏に厳しいという理由であまり録音を残さず、またメディアにも多く登場してこなかったことから、日本はもちろん英語圏でも広くは知られていない存在だった。

ベルリン・フィルが次期首席指揮者の発表を一度延期したこともあって、そのアナウンスには、クラシック音楽界の注目がいつも以上に集まっていた。そんななか、有力候補だったスター指揮者をおさえペトレンコの名前が発表されたときは、驚きの声が上がった。

とはいえ、ペトレンコはもともとドイツ語圏ではオペラ指揮者として高く評価されている存在。1972年、シベリアのオムスク生まれの彼は、ヴァイオリニストの父の仕事の関係で、18歳のときオーストリアに移る。ロシアとオーストリア両方で培った音楽性を強みとして歌劇場でキャリアを積み、2013年からはバイエルン国立歌劇場の音楽総監督を務めている。

この録音は、ベルリン・フィル次期首席指揮者就任発表の後、初めてペトレンコが同オーケストラと共演した公演を収録したもの。演目は、チャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》。優美さと力強さが交互に顔を出すドラマティックな第1楽章、民族音楽の香り立つ第2楽章、音楽が徐々に膨らみエネルギーを爆発させるような第3楽章、叙情と哀愁があふれる第4楽章。世界中から精鋭を集めた演奏家集団が、ペトレンコの細かな要求に応え、美しく引き締まった、そして時に情熱をほとばしらせるような音楽を奏でる。

これから新首席指揮者のもとで生まれる数々の名演を予感させる、目の覚めるような演奏。気持ちを鼓舞したいときに合う一枚だ。

 

 

 

三浦文彰(ヴァイオリン)、辻井伸行(ピアノ)
フランク:ヴァイオリン・ソナタ/
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ
第1番《雨の歌》

エイベックス
3000円

初めてデュオでの録音をリリース

2009年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール優勝が日本中で話題となり、以来、幅広い層から支持を集めて精力的な演奏活動を続けるピアニストの辻井伸行。

そして、ヴァイオリニストの両親のもと音楽一家に生まれ、同09年に16歳で世界最難関ともいわれるハノーファー国際コンクールにて優勝したヴァイオリニストの三浦文彰。彼もまた、16年にNHK大河ドラマ『真田丸』のテーマ曲でソロを弾くなどして、コアなクラシックファン以外からも人気を集める実力派だ。同じレコードレーベルに所属し、何度も共演を重ねてきた二人が、ともにコンクール優勝から10年の節目を迎え、初めてデュオでの録音をリリースした。演目は、ヴァイオリンの王道レパートリーである本気度の高い2曲。ツアーで弾き込み、良い状態になったところで録音が行われたという。

フランス系ヴァイオリン・ソナタの最高傑作といわれるフランクのソナタは、三浦が辻井に合うと考えて提案したという作品。三浦の予想通り、ピアノによる冒頭部分から、柔らかく透きとおった辻井の音色が生きている。三浦のよく通るヴァイオリンが、のびやかに、時に官能的な空気を漂わせながら歌い、辻井のピアノは、そこにピタリと寄り添うようなあたたかさをもって奏でられている。

ブラームスのソナタ第1番《雨の歌》でもまた、包み込むようなピアノの上で、ヴァイオリンが、幸福感に満たされたようなふくよかさをもって表情を変える。ブラームスの内に秘めた情熱があふれる音楽を、両者とも、注意深い音のコントロールで表現していく。三浦のヴァイオリンに導かれるように、辻井の演奏もいつもより艶やかになっているのが印象的だ。爽やかでありながら濃密な情感も含む、聴き応えたっぷりのアルバムとなっている。