専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、商品ジャーナリストの伊藤惇夫さんが、「大臣適齢期」を解説します。

適齢期を逃すと、ゴマすりや工作で大変

ライフスタイルが多様化するなかで、いまや“死語”となっているのが、「適齢期」という言葉ではないだろうか。ところが、いまだにそれが一大関心事になっているのが永田町だ。もっともこちらで注目されるのは、「結婚」ならぬ「大臣就任」だが。

国会議員になった以上、政治家の大半が抱く夢は「総理は無理でも、せめて大臣」だろう。しかし、大臣になるには、それなりのハードルがある。建前上は「能力や識見をそなえているか」だが、実はもうひとつ、重要な“暗黙の条件”がある。これは自民党限定の話だが、「衆議院で当選5回以上、または参議院で当選3回以上」というもの。ここまでたどり着けば、みごと「適齢期」となる。この条件にあてはまる人は、2019年8月下旬時点で、党内に約70人。競争率は高い。

もちろん例外はある。有能だと評価されたり、総理のお気に入りだったりすると、当選回数が5回(3回)以下でも、入閣するケースは少なくない。いっぽうで、「適齢期」を過ぎてもなかなか入閣できない連中もかなりの数いる。なかには、異性問題や金銭問題などの「身体検査」で引っかかり、縁遠くなっている人も。

当選回数が7回、8回になっても未入閣の議員連中は、やがて「滞貨」と呼ばれるようになる。彼ら彼女らにとって、入閣できるかどうかは今後の選挙での当落にも大きくかかわってくるから、内閣改造ともなると、派閥の幹部にゴマをすったり、猟官運動に走り回ったり……。大臣になるのも、なかなか大変なのだ。