安奈 私が初めて『ベルばら』の舞台に立ったのは翌75年。私はオスカルを、榛名さんがアンドレを演じました。再演ということで呑気に構えていましたが、それでもそういったお手紙をもらったりして、母がすごく心配していた記憶があります。
榛名 それだけたくさんの方が注目していたということよね。
安奈 本当に。オスカルは普段は男装の麗人なんですが、途中で一度だけ女性の格好をして舞踏会で踊るシーンがあったんです。舞台初日、そのお姫様のようなドレスを着て花道から出て行った瞬間、「うおおぉ……」という、これまで聞いたこともない地鳴りのような声が超満員の劇場に広がって。
その時に初めて、「私はすごい舞台に立っているんだ」という自覚を持ったんです。あれはゾクッとしましたね。
榛名 初演ではマリー・アントワネットが中心で、再演ではオスカルとアンドレがフォーカスされ、熱狂がより高まったのね。ファンの年齢層も一気に広がって、小学生までもが来場するようになった。楽屋口では毎回、ファンの方がわんさか待っていました。
安奈 私など、警察官に両側から腕を掴まれた格好で劇場の外へ出て行きましたよ。私をガードしてくださっていたのですが、どう見ても犯人の連行。(笑)
榛名 東京で上演した時は、危ないからと楽屋口から先輩と一緒にタクシーに乗せられて、寮まで強制送還。本当にすごい盛り上がりでした。