どんなアーティストが好きだったっけ?
ヒャダ 僕らは老けていくわけじゃないですか。今の「マルバツゲーム」も「シュビドゥンドゥン」も、言ってみれば「点」だったわけです。でもそれがどこまで「点」でいられるのか。どこかで「線」にしておかないと、本当にそのまま消滅してしまうかもしれない。
久保 そういうことはたくさんある。
ヒャダ だから僕は積極的に聞くようにしてます。ツイッターで「この曲なんでしたっけ?」と聞いて、Yahoo!知恵袋みたいな使い方をして。僕は楽器が弾けるので、曲名や歌手を忘れていても、覚えているフレーズを弾いて、それで捜索願を出したことはありましたね。本当にそれでわかったときもあって。
能町 私もそういう使い方をしたことある。やっぱり集合知は強いですよね。
──サブスクで音楽を聴くとき、なにを聴いたらいいかわからないときがあるんですよ。自分の好きなアーティストを脳内でインデックス化できてないから。パッと思いつくのって、かなり昔のやつか最近のやつかの二択みたいな感じで。iPodの時代は自分が持ってる音源のリスト化だったからよかったけど、サブスクは全アーティストが対象だから、「どんなアーティストが好きだったっけ?」みたいなことになってしまって。
久保 それで言うと、昔、自分が作ったMDのマイベスト集を聴いたときに、「ハアアア〜!」と思うんですよ。「この人の選曲すげえ!」みたいな。自分なんですけど(笑)。
一同 (笑)
──年月がたつと、「知らない人が編集したベスト集」みたいに思えますよね。
久保 そうそう。そういう楽しみがあるんだけど、MDはほとんど捨てちゃったんだよね。ただ、ちょっとだけ残してる2017年くらいのマイベストがいくつかあって……。
ヒャダ 2017年ってけっこう最近じゃないですか(笑)!?
久保 そのあたりのマイベストはリストに残してあって、たまに曲を聞き返すと、新鮮に震えるんですよね。
能町 ちゃんとリスト化してるんだ。
久保 聴いてると、「この頃めっちゃアイドルが好きでいろいろ聴いてたなあ」とか、「私、本当に音楽好きだったんだなあ」とか、いろいろ思い出す。去年は好きなK-POPを集めてリスト化したけど、やっぱりその時々のマイリストを作っておいたほうがいいなって。
ヒャダ ですです。
久保 自分の好きなものって、本当に全部は覚えきれないからね。
能町 私、気づいたら全然音楽を聴かなくなっちゃったんですよ。だからどうしたらいいかわからなくなっちゃって。
久保 私は今も聴いてるけど、昔「モテキ」を描いていた頃の聴き方とはちょっと違うなと思う。あの頃は「いかに原稿に集中するか」とか、「自分をアゲるか」とか、「いかに作品にフィードバックするか」とか、そういう聴き方をしていたけど、今はそういう気持ちでは聴いてない。だから聴く音楽のインデックスが昔と違うのはわかりますね。
──「歳を取ると、新しい曲ではなく若い頃に聴いてた曲ばかり思い出す」という説がありますよね。それは「新しい曲を聴かなくなったから」というのもあると思いますけど、「昔の曲はカラオケでよく歌ってたから」というのもあると思うんですよね。自分の肉体を通していたから。
久保 そう、それ! もうカラオケはずっと行ってないし、久しぶりに行っても、なに歌ったらいいかわからなそう。今はK-POP系が好きだけど歌えないものが多すぎて、日本語で歌える歌はあんまり覚えてないし。「香水」も歌えるか自信ないよ。
能町 私もカラオケずっと好きだったんですけど、好きだった頃は行くたびに新しい歌を歌ってた記憶があるんですよ。一人カラオケに行って、最近覚えた新しい歌を歌うのが楽しみだったのに、最近は自分の中に新しい歌がないので、行っても面白みがだいぶ減ってしまって。「懐かしい歌を歌うだけの人」になっちゃってるのがすごくイヤなんですけど、かといって新しい歌を仕入れることも全然してないし。どうしたらいいんだろうって感じです。自分の中のカラオケ最盛期は、たぶん大学生のときですけど、その頃って、別に好きじゃなくてもヒット曲を聞いてたんですよね。
ヒャダ しかも歌えてましたよね。
能町 トップ10くらいの曲をどこかで聞いてて、別に自分はファンでもないし、CDを持ってもいないのに、カラオケのレパートリーがある程度増えてて。それがもうまったくないんですよね。
ヒャダ どっちかですよね、加齢のせいなのか、時代のせいなのか。
能町 まあ両方な気もするけど。