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専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、経済ジャーナリストの荻原博子さんが、「幼児教育・保育の無償化」を解説します。

施設や保育士不足の解消が先決では?

消費税を10%にアップした財源で、幼稚園や認可保育所、認定こども園を利用する3〜5歳児の施設利用料が無償化されました。0〜2歳児については、住民税非課税世帯(低所得者世帯)ならば利用料が無料となります。一見すると子育て世帯の負担が減る良い制度に思われますが、実は問題点も多いのです。まず、利用する施設によって無償化の実施方法が異なることに注意しましょう。

0〜2歳児の場合、認可外では月4万2000円までが無償になります。3〜5歳児の場合、認可外保育施設では月3万7000円まで。幼稚園は月2万5700円、預かり保育は月1万1300円までと、さらに制限が厳しくなります。

また、この制度には逆進性(本来の目的とは逆の方向に進む傾向)があります。従来は、世帯収入に合わせて保育園の利用料を徴収していたため、生活保護受給者は無料でしたが、高所得者は月10万円に及ぶケースも。これがすべて無償化になると、収入が多い人ほど大きな恩恵を受けることになるのです。

さらに、施設不足の問題もあります。2019年4月時点では待機児童が約1万6000人。施設の数は変わらないのに利用希望者が増えれば、待機児童の数はますます増え、子どもを預けて働きたいと切実に思っている人にとってはハードルが高くなります。

足りないのは施設だけではありません。19年3月時点で、保育士の有効求人倍率は3.37倍。保育士の待遇改善が遅れており、ただでさえ不足している状況で、はたして保育の質は担保されるのでしょうか。制度は始まったばかりですが、解決すべき課題は山積みです。