「AIの時代、写真は観る方の姿勢が問われる」という太田さん。
「絶景」とは、被写体の手前に遮るものがない場所からの画角が選ばれることが多いが、富士山の手前に電線が写りこんだままの写真もあった。「邪魔なものが簡単に消せてしまう今。本来〈真実をありのまま写す〉のが写真であるなら、この時代にこの場所から電線が見えているというのは歴史の資料ともいえる。将来、電線がすべて地下に埋まってしまったらこの景色はなくなってしまうのだから」と太田さんは紹介する。
野辺地さんの写真に対しては、「カナダ大使館の展覧会を見て声をかけました。撮影する自分を景色が受け入れてくれるまで待つ、距離感や謙虚さに惹かれました。池の鯉をわざと朽ちた塀越しに撮影したり、富士山を撮るのに飛行機の窓枠を入れたりする視点が面白い」と語った。
一番印象的だったのは、「富士山らしきもの」が写りこんでいる、昔の日本人の記念写真をコラージュした作品。家族写真もあれば、合同ハイキングのような写真も。ポーズや髪型、服装に時代が反映されている。フェイクやAI写真へのアンチテーゼでもあり、自分が撮影した写真は一枚も入ってない。技術上どんな写真も撮れるようになる時代「選ぶ」ということも写真家の個性になるのかもしれない。