“新しい声”を探す努力が大切
イギリスの公共放送・BBCが2017年に開始した「50:50 The Equality Project」。「番組の出演者の女性の割合を測定し、増やす」というアイデアからスタートした本企画は、多様な社会を公正に反映したコンテンツ作りを目指している。日本の放送局としては、NHKが国内唯一の参加となる。
――50:50プロジェクトを導入してからの変化について教えてください。
石川:BBCのニュース番組からはじまった本企画は、現在、世界30カ国・50を超える組織が参加しています。(2023年12月時点)。NHKとしては、2024年5月時点で15の番組がこのプロジェクトに参加しており、ジャンルは、ドラマ、ニュース、スポーツなど多岐にわたります。
いろんな制作現場のプロデューサー・ディレクターから、「計測してみるとかなり偏りがあり、女性が圧倒的に少ない」との声が多く聞かれました。「ジェンダーバランスに思い至っていなかったことを痛感する」と。
それを機に、スタジオにゲストをお招きする際など、いつもお願いしている先生だけではなく、新しい先生を探してみようとする動き、声がけが現場で増えてきました。「忙しくて新しい先生を探すのが大変」という声もありますが、BBCからのアドバイスでは、「New Voice」とよく言われます。
「“新しい声”を探すことは、公共放送としての大きな使命ですよね」と。新しい声を探す努力をすることにより、多様な声を視聴者の方々に届けることができる。そのためには、日頃のちょっとした意識付けが行動変容につながる必要があると思っています。
――50:50プロジェクトをはじめてから、自然と制作サイドのジェンダーバランスにも目が向くようになったとか。
尾崎:ちなみに、50:50プロジェクトに連続テレビ小説(東京制作分)が枠として参加して3年が経ちましたが、今作の『虎に翼』は、4月放送分をカウントしたところ、女性の占める割合が集計開始以来、最も高くなりました。
出演者だけではなく、現場に女性のスタッフが増えることも大切だと感じます。今のNHKでは、若手のディレクターなどは男女比が半々ぐらいなのですが、上のほうにいくと男性の割合が増えてきてしまう。なので、スタッフィングの段階で「プロデュースする人に女性を入れてください」と事前に頼んでおかないと、意思決定の権限を持つ層が男性ばかりになってしまうんです。
石川:企画段階で女性が参加することによって、エピソードのバリエーションが広がりますよね。
尾崎:そうなんです。ドラマの台本をつくる際に「台本打ち合わせ」をやるのですが、その現場の男女比が50:50になるように、というのは意識して取り組んでいるところです。男女が反発しあっているわけではなく、それぞれの意見を入れ込みながらつくることで、より良いものができると思っています。