多様な広がりを見せる50:50プロジェクト
女性の権利平等は、令和の現代においても、必ずしも叶ったとは言い難い。また、ジェンダーは男女だけではなく、性自認が男性にも女性にも当てはまらないノンバイナリーなど多様なものであることが明らかになっている。50:50プロジェクトの今後の課題点、カウントの先に目指すものとは。
――50:50プロジェクトに対する今後の課題について教えてください。
尾崎:同じドラマでも、『鎌倉殿の13人』は男性が多く、『虎に翼』は女性の割合が多い。ドラマはテーマを選ぶ段階で、ある程度、登場人物の男女比の予測がつきます。では、『鎌倉殿の13人』の中で意図的に女性を増やすことはできるんだろうか、それはしていいんだろうか、という部分は悩みどころです。
――男女のみならず、ノンバイナリーなども含めて、ジェンダー問わず自分の意思を臆さず主張できる社会にするために、50:50プロジェクトは意義のあるものだと思われますか?
石澤:男女比を数えて可視化することには暫定的な意味があります。でも、この先の社会全体としては、「男女で分かれない社会」を目指したい。今はその過渡期のカウントなんだと私は思ってます。
今回のドラマの反響として、「女性の味方」「女性に人気」と書いていただくことが多いのですが、私は「男性も生きづらいだろうに」と同時に思っていて。戦争に行くことひとつとっても、優三さん(寅子の夫)にしろ、直道さん(寅子の兄で、花江の夫。共に戦争で亡くなる)にしろ、決して逃れられないですよね。
ドラマでは、参政権もないわ、裁判官にもなれないわ……あまりにも女性がなにも持っていない時代を描いているので、「女性の味方」のように映るんだと思うんです。でも、広い意味では、“弱い立場の人みんなに届け“と願いながらつくっています。
男女で分けて語られる時、「女性はケアや気遣いができる」みたいにいわれることが多いんですけど、ケアという能力は女性という“性”が背負っているものではなく、マイノリティになった経験があるかないかによって分かれるものだと理解していて。社会の中で数が少ない側になると、どうしてもマジョリティの考えを読むので、気遣いをする側になりやすいんです。なので、女性は男性に比べてそういう環境で育った人が多い、ということなのだと思います。
石川:BBCでは、エスニック・マイノリティの方をカウントする取り組みも進められています。障害がある方など、男女以外を対象として数えるチームもあります。なので、企画自体がどんどん多様な形で広がっています。
――今後の『虎に翼』の見どころについて教えてください。
尾崎:これから先は、寅子が裁判官としてのキャリアを歩みはじめます。これまで以上の男社会の中で、どんなふうに寅子が道を切り開いていくのかが、新たな見どころになると思います。