「仕方なく、長女のセンター試験の点数を教えたら、うっ、と言葉を詰まらせたんです。義姉が思うより点数が良かったらしく、以来、まったくお問い合わせなしです(笑)」
優しくて穏やかなお義母さんも実は…
娘たちを従姉たちと比べても遜色ない大学に進学させたユキエさんは、まずは安堵した。もちろん、これで引き下がる義姉ではない。
「義姉は進学で引き分けたことがどうにも許せなかったらしく、次は、娘たちの就職先、結婚相手の学歴、経済事情、社会的地位を比べようとしました」
ユキエさんが学んだのは、義姉が何を言ってきても娘たちの情報を伝えないこと。どんなに探りを入れられても、「まあ何とかね」「ぼちぼちやってます」と答え続けた。
それとなく義姉を遠ざけていたユキエさんだったが、介護のため義母と同居したことで、一家の差別意識の根深さを思い知る。
「優しくて穏やかなお義母さんでしたから、義姉とは大違いと思っていたら……」
一緒に住んでみると、「あの家は代々頭が悪い」とか「あの子はブスで可哀そう」とか、学歴や美醜についての批評が会話の端々にでてくる。夫までが「やっぱりあいつは○○大学だからな」と母親に話を合わせる始末。
「やれやれと思いました。これはもうDNA。親の代から続く“格差好き”が子どもたちに凝縮したんだとわかりました」
人の上に立つことや人より頭が良いこと、美しいことが価値観のすべてのような家風は、自分の代で断ち切ろうと覚悟したユキエさん。娘たちには、人と比べるのではなく、自分が望むように生きてほしいと心から願う。
「子どもの生き方って、親の通信簿だと思うんです。子どもに妙な価値観を植え付けないよう気をつけなくちゃと思っています」