本物の家族、普通の家族とは?

西園寺さんが自身の家を購入したのは、「家庭」から自由になり、自分が「やりたいことだけをやって」暮らすためだった。

西園寺さんの母親は家事をしっかりする、いわゆる「いいお母さん」だったが、ある日突然、家を出て行ってしまった。原作では、もともと優秀な教師で、結婚して専業主婦になった女性として描かれている(そしてそんな母親について西園寺さんは、「家族のため家族のためって 我慢して我慢してブチ切れたんだったら “家事”って 家庭ってなんなんだろうなあ……」と振り返っていた)。

また、ドラマのなかで楠見くんが西園寺さんに対して「家族でもないのに」という言葉を口にするが、一緒にご飯を食べ、仕事が早く終わったほうが保育園にルカを迎えに行き、互いを思いやり、協力して家事と育児をこなす様は、じゅうぶん良い家族に思える。

そもそも偽家族に対する「本物の家族」って何だろう。法的な届けを出していること? 血が繋がっていること? 本物の家族だからといって上手くいくとは限らないことは、すでに西園寺さんの家庭が証明しているではないか。

第4話では、「普通の家族とは?」というテーマが描かれた。ルカの保育園の保護者仲間の家庭環境が、「夫の連れ子を育てている」「女性どうしでパートナー」「妻が単身赴任中」とさまざまであることを知った西園寺さんと楠見くんは、「普通の家族なんて存在しない。自分たちは存在さえしないものに振り回されているのでは?」と思い至るのだ。まさに令和を感じさせるいいシーンだった。

原作『西園寺さんは家事をしない』(c)ひうらさとる/講談社