なんでも「楽しく」。人を傷つけちゃいけない
もう一つ大きかったのは、劇作家・演出家であるつかこうへいさんとの出会いです。昔、まだそんなに仕事が多くなかった頃、今年は芝居を100本観ようと決めた年があって、いろいろな舞台に通っていました。そんななか、つかさんと出会った。
僕はもともとつかさんの作品が好きで、高校生の頃、紀伊國屋ホールに並んで観ていたんですよ。それで「やるか?」という話になって。公演まで1年以上の期間があったから、それだけ時間があれば俺でもなんとかなるんじゃないかと思って出たのが、『熱海殺人事件』のサイコパスというバージョン。30代半ばでした。
鮮烈な体験でいろんなことを教わったけど、一番印象に残っているのは、「主役は動くなよ」と言われたこと。「真ん中に立って真っ直ぐ前を見つめて、愛だ青春だ希望だって、大きい声でしゃべってればいいんだ。恥ずかしいとか、こんなことやってて大丈夫なんだろうかとか、途中で絶対に迷う。そこで揺れない人間にならなきゃいけない」って。これは芝居に限らず、人生のキーワードになりましたね。
その頃に気象予報士の資格にも挑戦しました。僕は小さい時から、南風が吹くと山に雲が湧くのが不思議だったんです。気象予報士の森田正光さんに話したら、「気象予報士の勉強をすると、その謎が解けますよ」って。それで予備校に通って、試験を受けました。
当初はテレビで「飽和水蒸気量が……」とかしゃべっても、カットだったんです。ところがそのうち「癒やしの時代」がやってきた。山歩きが流行ったりして、みんなが自然の近くに行きたいというムードになったんです。
そんな時、「どんな海よりも広く、どんな山よりも高く、一番身近な大自然は空なんです」と話していたら、『FNNスーパーニュース』のプロデューサーから、「空の楽しさを伝えてくれませんか」と言っていただけました。
最初は、天気予報は人の命や財産を守る情報だから、バラエティーやドラマをやっている人間が伝えるのは危険だと思っていました。でも、楽しさを伝えるなら役に立てるだろうとお受けしたんです。
僕はなんでも「楽しく」が基本。やっぱりお坊っちゃんだから、人を傷つけちゃいけないと思ってるんですね(笑)。最近はニュース番組のコメンテーターの仕事もさせていただいていますが、一方的にならないよう気をつけ、なるべくニュートラルにいろいろな目線から物事を伝えるようにしています。