専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、政治アナリストの伊藤惇夫さんが、「資産公開」を解説します。

「資産ゼロ」にはウラがある

入閣以来、何かと話題の小泉進次郎環境相だが、2019年10月25日に公開された新閣僚の保有資産額でも注目を浴びることになった。なにしろ、新閣僚15人中トップの約2.9億円だ。もっとも、これはすべて夫人である滝川クリステルさんのもの。小泉氏自身の資産は「ゼロ」だというから、ちょっと驚きだ。

「資産公開」は、1984年に中曽根内閣が始めた制度だ。当初は閣僚だけだったが、88年の政界汚職、リクルート事件を契機に、すべての国会議員(家族を含む)が対象になった。新たに入閣した閣僚についてはその都度、公開されている。公開対象は、保有する土地、建物や預貯金、有価証券、クルマ、ゴルフ会員権、貸付金、借入金などだ。

ただし、この資産には「抜け穴」もある。預貯金については、当座預金と普通預金は対象外となるからだ。つまり、普通預金がいくらあっても、資産は「ゼロ」。ちなみに、2018年4月に公開された衆院議員465人の資産を見ると、「ゼロ」が70人もいる。

名門政治家の家系に育ち、外から見れば裕福だと思われても不思議はない小泉氏が「資産ゼロ」というのは、首を傾げる向きもあるだろう。普通預金はそれなりに保有しているのかもしれないが、もう一つの可能性は、政治団体の存在だ。政治家個人の団体は親から子へと丸々引き継げるし、家屋もクルマも政治団体の「持ち物」として登録しておけば、資産にはカウントされないのだから。もっとも、小泉氏もそうしているかどうかはわかりませんよ。