売れない時期があって本当に良かった

今までね、夢なんて口にするものではないと思っていたんです。静かに自分の中に秘めておくものだと。でも、口に出すことで実現するものもある。それを今回教えてもらいましたし、それと同時に、言霊が成立するのは日々の自分がきちんと暮らしていてこそ。積み重ねをしていてこそ。この歳になって、それも感じました。

(撮影◎中西正男)

47年を振り返ると、歌手として大きかったのはやっぱり最初のヒット曲「ふたり酒」。これで人生が変わりました。世界が変わりました。それまでは売れない時代が続いてましたから。でもね、売れない時期があって本当に良かった。それも今思うことです。

常に「いい気になるなよ」と言ってくる自分がいてくれるんです。「今は商品価値が出てきたから、皆さんがいてくださる。でも、そうじゃない世界なんてまたすぐに来る。その世界を知ってるやろ?」。それを言い続ける自分がいる。だからこそ、なんとかやってこられたんだと思います。

若い時の苦労は買ってでもしろ。そんなことを言いますけど、正直、苦労の中にいる時は「そんなことまでして苦労なんてしたくないわ!」と思ってました(笑)。でも、それがあってこその今だとつくづく感じています。