毅然とした行動を見せる

「中国は国力が付いたことで、それを発揮したいという意識が強くなっている。弱肉強食になり、弱い国に臆面もなく力を見せつける。昔の中国とは違う段階に入っている」=興梠氏

「中国は『日米同盟は強固だ』と認識しており、日本とは衝突したくない。しかし、中国は情報収集活動を活発化させており、そうした衝突まで想定した準備を始めている」=小原氏

飯塚中国軍は8月以降、日本周辺でも挑発的な活動を続けています。情報収集機が長崎県・男女群島沖の領空を初めて侵犯したほか、空母「遼寧」が沖縄県・西表島と与那国島の間の接続水域を初めて航行しました。日本は岸田前首相が退陣表明した政権移行期で、中国には日本に揺さぶりをかける狙いがあったと思います。

決して隙を見せてはいけません。日本も9月、海上自衛隊の護衛艦に台湾海峡を初めて通過させました。「遺憾」という言葉だけではなく、毅然とした行動で意思を示したことは評価できます。米国、欧州、豪州の艦艇はこれまでも台湾海峡を通過してきましたが、日本は慎重に避けてきました。国際社会でも大きな反響があり、私が取材した米軍関係者も「日本の行動を歓迎したい」と話していました。

衛星画像ロシア軍事施設増加©️日本テレビ
再開 南シナ海・台湾巡り米中が”防衛協議”©️日本テレビ

中国・広東省深圳市で9月、日本人学校の男子児童が中国人の男に刺殺される痛ましい事件が起きました。しかし、中国は事実解明や再発防止に非協力的です。垂(たるみ)秀夫・前駐中国大使は読売新聞のインタビューで、「事件は起きるべくして起きてしまった」と述べています。中国のSNSで日本人学校に関する悪意と誤解に満ちた動画があふれているにもかかわらず、中国政府は改善に動いているのでしょうか。事件は通学途中に起きており、対策を講じるよう強く求めるべきです。

吉田同感です。ロシア軍の哨戒機も9月、北海道・礼文島沖の領空を侵犯しており、日本周辺で中露の連携が目立つようになっています。次は米国が政権移行期に入ります。油断することなく、対処することが大切です。岸田氏は4月の訪米時の議会演説で、日本は「控えめな同盟国から強く関与する同盟国に変革した」と述べました。石破首相も、こうした姿勢を米国に伝えて、米国にもこの地域への関与を強めるよう働きかけるべきです。

衛星画像ロシア軍事施設増加©️日本テレビ
焦点 中国の”現状変更”に日本の備えは©️日本テレビ

日本は防衛力を抜本的に強化しており、南西諸島における対処能力を高めています。海上保安庁とのスムーズな連携も実現して、中国に対する抑止力を高めねばなりません。さらに、東南アジアの同志国に対する支援を続ける必要があります。南シナ海は日本の大切なシーレーン(海上交通路)です。フィリピンが今回撤退させた巡視船は、日本が供与した船でした。活動を再開できるよう後押しするべきです。

解説者のプロフィール

飯塚恵子/いいづか・けいこ
読売新聞編集委員

東京都出身。上智大学外国語学部英語学科卒業。1987年読売新聞社入社。 政治部次長、 論説委員、アメリカ総局長、国際部長などを経て現職。

 

吉田清久 読売新聞編集委員

吉田清久/よしだ・きよひさ
読売新聞編集委員

1961年生まれ。石川県出身。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。1987年読売新聞社入社。東北総局、政治部次長、 医療部長などを経て現職。

 

提供:読売新聞