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専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、経済ジャーナリストの荻原博子さんが、「百貨店の閉店ラッシュ」を解説します。

消費者の意識の変化が地方店舗の売上を直撃

地方都市の百貨店が相次いで撤退しています。2019年は全国で10店舗以上が閉店。さらに2020年も、そごう・西武が「西武大津店」(滋賀県)など5店舗の閉鎖を発表しています。その中には「そごう徳島店」もあり、ついに徳島県内から百貨店がなくなってしまうことになりました。

今、地方で百貨店の閉店ラッシュが起きているのはなぜでしょうか。いくつか要因がありますが、まず、立地の問題。百貨店は駅前の地価の高い土地に出店するため、充分な駐車場が確保できません。地方は車社会ですから、広大な駐車場を用意している郊外の大型ショッピングモールの方に客が集まります。

さらに、地方の百貨店は高度成長期に出店したところが多く、建ってから30〜40年以上経過した店もあり、建物の老朽化が進んでいる。当然、耐震性に問題があるのですが、建て替える資金がないため、やむをえず閉店する、というところも。

なにより、消費者の意識の変化が大きいでしょう。経済が停滞し、収入が増えないなか消費税も上がり、高級品を揃える百貨店に足を向けない人が多い。さらに、ネットで価格を比較してより安い場所で買うのが当たり前に。百貨店には実物を見に行くけれど、ネットで購入する、というケースが増えています。

百貨店の売上は都会の富裕層に支えられているので、都会ならばなんとかやっていけても、地方では難しいのです。オリンピック後は訪日外国人客も大きく減ることが予想されるだけに、都会も油断はできません。この閉店ラッシュはしばらく止まらないでしょう。