タジマEVの「イーランナーULP1」。軽自動車に比べ、全長は約90cm、全幅は約19cm短いミニカー。それでも4人乗車することができる(写真撮影◎北村森)
専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、商品ジャーナリストの北村森さんが、「超小型モビリティ」を解説します。

2020年から本格普及。シニアと女性に優しい

この先の社会で課題になってくること。それは「人が移動する手段や自由をどう確保するか」です。人口が減る地方では深刻な話ですし、別角度からいうとシニアの方が安心して移動できる施策が重要になります。

2020年、そうした問題へのいわば処方箋が見えてきそうです。具体的には、公共交通網が行き届かない場所でも手軽に使え、しかも運転がすごくラクな小型のモビリティ……。

2019年秋の東京モーターショーで私がとりわけ注目したのは、2つの新しい電気自動車(EV)でした。どちらも「タジマEV」という気鋭のベンチャー企業の手による提案です。

1つは、4人が乗れるのに軽自動車よりコンパクトなEVの「イーランナーULP1」。過去に大手メーカーが試作・発表していた超小型モビリティに比べ、デザインが洒脱ですし、ごく小さいわりに車内空間がまずまずあって実用的にも思えます。近々、岐阜県の高山市を舞台にした実証実験で実際に走り出すそう。

もう1つは「EV3WHEELER」。三輪のカートに屋根だけついたような、シンプルなEVです。なんなのかと思ったら「ママチャリより安全に子どもを乗せられる一台」とのこと。なるほど、狙いが明快ですね。

別の話もあるんです。やはりベンチャー企業であるWHILLは昨秋、東京の羽田空港で、電動車椅子の自動運転システムの実験を行っています。長い通路を歩くのが困難な人に、空港内での移動をラクにしてもらおうというもの。搭乗ゲートなど目的の場所まで、電動車椅子が自動で人を運んでくれます。これもまた、切実なニーズに応える存在でしょうね。

ラクに移動する手段が、公共交通網や既存のクルマ以外でも得られる……そんな世の中に変わる突端の一年になりそうという話です。