サンマを…

認知症の父が食べたものを覚えていないのは仕方がない。同時に「覚えていない」は魔法の言葉だと思う。そう言われたら許すしかないし、何も言い返せないからだ。どうして忘れるのかを問うたところで、物忘れは治らない。つまり、優しく接して従うよりほかないのだろう。抗っても仕方がないのだ。

リクエストの食材が、頭に良いとされるサンマでよかったと思うことにした。サンマ月間のときの父は、心なしかしっかりしたように見受けられたから......。

第56話へ続く

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