「がん」「脳卒中」「心筋梗塞」あなたの疾患リスクがわかります 1回の採血が早期発見の近道｜健康

未来の病気リスクがわかるとしたら……。誰もが願うことでしょう。死亡率の高い三大疾病のリスクを評価できる検査が、今話題になっています。５ccの採血だけという負担の少ない新しい検査方法とは――

教えてくれるのは

栗原照昌先生（くりはらてるまさ）

医学博士。黒沢病院乳腺外科部長。乳腺専門医。人間ドック健診専門医・指導医。富山大学医学部卒業。群馬大学外科、埼玉県立がんセンター、亀田総合病院などを経て、2011年より現職

健康診断だけで病気のリスク発見は難しい

日本人の死因の51.4％を占める、「がん」「脳卒中」「心疾患」の三大疾病。なかでもがんは、27.9％でトップになっています。（厚生労働省「人口動態統計年報」2017年）

とはいえ、がんは早期に発見し、治療を始めることができれば生存率が上がる病気でもあります。それにもかかわらず、がん検診の受診率は5割にも満たないのが実情だそう。「知らぬ間に病気が進行していることも少なくない」と、先生は警鐘を鳴らします。「2人に1人ががんに罹患する時代と言われて久しいですが、現在は1.5人に1人の割合と言っても過言ではないでしょう。それくらい誰もがかかる可能性のある病気なのです」と話すのは、栗原照昌先生。

「会社や自治体などが行う一般健康診断は、基本的な検査、つまり身体計測、血液検査、尿検査、心電図などで、あくまでも健康状態を把握するものであり、がんを見つけるための検査ではありません。一方、がん検診や人間ドックは病気の早期発見を目的としたもの。検査の範囲が広く、一般健康診断だけでは見つけにくい病気の発見につながるため、予防や治療の早期スタートに非常に有益です。一般的な健康診断だけで済ませている人は、重大な病気を見つける機会を逃していると心得たほうがよいでしょう」

そんななか、がんの早期発見や脳心疾患のリスクチェックが簡易にできる検査が登場しました。三大疾病のリスクを評価する「アミノインデックスリスクスクリーニング（AIRS）」です。これは、アミノ酸研究の世界的企業である味の素が開発した検査方法で、採血した血液を分析し、現在がんである可能性を評価。加えて、10年以内に脳卒中、心筋梗塞を発症するリスク、4年以内に糖尿病を発症するリスクを評価します。

「健康な人の血液中のアミノ酸バランスは一定に保たれているのですが、病気になるとそのバランスが崩れることがわかっています。この検査は、そのアミノ酸バランスの変化に着目したものです」

５㏄の採血から、複数部位の現在がんである可能性や将来の脳心疾患、糖尿病になるリスクを評価できるため、時間的、肉体的な負担が少ないのがメリット。

「通常のがん検診は、肺ならCT、胃なら内視鏡、子宮なら細胞診など、部位ごとに検査を行う必要があるため、費用も高額になり、検査へのストレスも大きいでしょう。しかし、アミノインデックス検査なら採血だけで済むため、最初のリスクスクリーニングとしては忙しい人や、体力がない人でも受けやすいと思います」

早期発見だけでなく健康への意識も変わる

検査結果は、がん種ごとに罹患リスクの低い「ランクA」、予備軍の「ランクB」、高リスクの「ランクC」で評価されます。ランクCがあった場合、医師と相談のうえ、精密検査を受けることで、より詳しく調べられ、発見の精度を上げていくことができるのです。

「ランクＣが必ずしも現在がんがあるということではなく、一般の人に比べて約10倍のリスクがあるという評価です。以前、大腸がんの評価がランクCだった方の精密検査を行ったところ、今後がんに進展する可能性が高い高度異型腺腫が見つかり、切除しました。がんを未然に防ぐことができた一例です。脳心疾患や糖尿病などについては、将来のリスクを評価するものなので、生活習慣の改善を指導することになります。もちろんアミノインデックス検査だけでも受けられますが、人間ドックにプラスするのがおすすめです。両方の結果を照らし合わせることで、総合的に判断ができるからです」

栗原先生の病院ではすでに640人近い人がアミノインデックス検査を受け、その後のアンケートで92％の人が「検査に満足した」と回答。さらに、ランクC評価を受けた人の半数以上が「生活習慣を改善した」と答えているそうです。

「病気のリスクが高いという評価結果は、行動を変えるきっかけになります。この検査は、健康への意識が変わるという意味でも非常に有用だと言えるでしょう。例えば、乳がんの罹患者が家族にいらっしゃる方は遺伝リスクも高いので検査をおすすめします。それ以外の方も、40歳を過ぎたら年に1回を目安にこの検査を受けて、健康管理に役立ててほしいですね」

現在、アミノインデックス検査を取り扱っている医療機関は全国で約1500施設。費用は医療機関により異なりますが、2万4000円前後です。健康寿命を延ばすためにも、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

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