ヴァイオリニストとして独自の世界を切り開く川井郁子さん。音楽家にとって、聴覚はもちろん、視覚情報も大切な要素だといいます。そんな川井さんの音楽に対する哲学と体のメンテナンス法を聞きました
情熱的で官能的な音色を奏でるヴァイオリニストの川井郁子さん。世界的オーケストラとの共演も多く、その華やかな舞台に魅了されるファンは少なくありません。
音楽の世界で「耳」が大切なのはいうまでもありませんが、実は聞くことに匹敵するくらい重要なのが「目」から得る情報なのだとか。
「レッスンで細かい譜面を追うのはもちろんですが、舞台上でほかの奏者とアイコンタクトをとって呼吸を合わせたり、弓の動きを確認したり。また、私はその場の空気を感じながら弾くことを大切にしているため、客席を見渡すことも欠かせません」
観客の想像以上に、音楽と目の関係は深いようです。それだけに、疲れ目が続くと演奏の出来に影響するといいます。
「舞台では強いスポットライトを浴びていますが、気持ちが高揚しているからか、まったく気になりません。むしろ、目が光に挑んでいくような感覚になっているのです。ただ、公演終了後は、目から全身に疲れがじわじわと広がるような感覚になるので、ケアは必須です。私は作曲も行うのですが、そのほとんどがパソコン作業。しかも、創作には終わりがありません。エンジニアと深夜まで作業をすることもしばしば。目が疲れると全身の倦怠感にも繋がり、パフォーマンスが落ちるのを実感します。そんなときは、しばらく目を閉じたり、目の周りをマッサージしたり。最高の演奏や納得のいく音楽作りのためにも、目をいたわるようにしています」