二人が出会って“うらめしい”から“すばらしい”に化けていく
――“朝ドラ”の執筆はいかがですか?
朝ドラは15分×125回あります。私が今まで書いた最長の脚本が、同じ15分で全32回の夜ドラでした。その時も「長いな」と思ったぐらい、これまでよくあるサイズの連続ドラマを書いたことがなかったんです。
連続ドラマに対する向き不向きもわからないぐらいなのに、朝ドラの長さは経験したことがないことのさらにさらに上をいくものでした。最初にお話しをいただいたときはこれは大変だなと思いましたが、引き受けたからには頑張ろうと思っています。
実際に書き始めてからは、書くことの長さは実はそんなに感じていません。先を見通してものを書くタイプではないので、スタッフのみなさんと一週一週の内容について打ち合わせを重ねて書く、ということを繰り返しています。
――「この世はうらめしい、けど、すばらしい。」というコピーは、どのようにして生まれたのか教えてください。
もともとはキャッチコピーとして考えたわけではなかったんです。
制作統括の橋爪さんが「ばけばけ」の企画書を提出するときに、そこに『ばけばけ』とはどんな話かというのを一枚くださいと言われて、そこに書いた内容の大見出しがこの言葉でした。まだドラマの大きな筋も決まっていなかったので、小泉八雲の怪談に引っ張られて、「うらめしい」というワードが出てきて、あまり考え込まず、すんなりと書いた覚えがあります。
トキやヘブンの生き方は、貧しかったり、両親と疎遠だったり、うらめしいことが続いたという共通点があります。そんな二人が出会って、“うらめしい”から“すばらしい”に化けていく。そんな『ばけばけ』の精神がひとことで表せたら良いなと思って、書いたのがあの文章でした。
トキとヘブンに限らず、この物語に出てくる人はみんなうらめしいことがあります。それでも、笑顔を忘れないというか、どこかでこの世はすばらしいととらえて生きている登場人物たちであってほしいという願いも込めて書きました。