ウイルスに負けず健康でいるためには、免疫力を下げないことが大事。けれど、生活習慣の乱れやストレスでその力はすぐに落ちてしまいます。「バランスのよい食事が免疫力キープの近道」という栄養学の専門家が、おすすめする食材は──
痩せても太っても免疫力が低下する?
コロナ禍を経験し、改めて〝免疫力〟の重要性を意識した人も多いのではないでしょうか。免疫とは、ウイルスや細菌などの有害物質を体内から排除し、体を守る防御システムのこと。正常に機能していれば健康を維持することができますが、低下するとさまざまな感染症にかかりやすくなるのです。免疫力は、ストレスや睡眠不足、運動不足、栄養不足などにより低下することがわかっていますが、「もっとも影響を与えるのが〝栄養不足〟」と、栄養学の専門家、上西一弘先生は警鐘を鳴らします。
「免疫力を下げないための睡眠法や運動習慣、ストレス解消法など、いろいろな方法が注目されています。どれも間違いではありませんが、私が一番大事だと思うのは、栄養不足にならないこと。なぜなら、人間の体は食べたものでできているからです」(上西先生。以下同)
飽食のこの時代、私たちは栄養過多なのでは? と思う人もいるでしょう。
「現代人の食事はおおむね、3大栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質)のうち炭水化物や脂質は足りている状況です。けれど、たんぱく質や食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素は不足気味。栄養過多なのではなく、カロリー過多なだけ。昔に比べ、野菜や魚、果物などの摂取量が減っているため、栄養バランスが崩れている人が少なくありません。自分がどうかを知るには、体重が適正体重の範囲内にあるかどうかが一つの目安になります。18~49歳の女性ならBMIが18・5~24・9が適正数値(BMI=体重kg÷身長m÷身長m)。痩せすぎでも肥満でも栄養バランスが崩れているという見方ができるでしょう」
3大栄養素は筋肉や骨を作り、活動エネルギーの素となる栄養素。たとえこれらが足りていても、その働きをサポートするビタミンやミネラルが不足していれば、体は栄養不足となり、免疫システムに不具合が起きるのだそうです。
「免疫力は、食事から摂る多くの栄養素が総合的に作用することで維持されます。そのため、バランスよく摂ることがとても重要。具体的にいうと、3大栄養素に加え、ビタミン、ミネラル、そして水分の摂取です。なかでも、たんぱく質やビタミンA・B群・C・D・E、鉄や亜鉛などのミネラル、そして食物繊維は、免疫力キープに欠かせない栄養素となります」
しかし、必要な栄養バランスを考えながら毎日の食事を用意するのはなかなか大変。そこでおすすめなのがキウイだといいます。
「キウイは栄養バランスに優れ、免疫力の維持に不可欠なビタミンCやEを豊富に含んでいる食材。食物繊維も多いため、免疫力を司る腸内環境を整えることもできます。食事メニューを細かく考えるのは無理でも、キウイを2個食べて栄養素を補うという方法なら実践できるのではないでしょうか」
抗酸化力が高いキウイが注目されている
そしてもう一つ、免疫力維持に欠かせないのが「抗酸化力」です。抗酸化力とは、紫外線や大気汚染、食品添加物などにより細胞が酸化ストレスを受けるのを防ぐ力で、低下すると老化や生活習慣病、がんの引き金になるだけでなく、免疫システム不調の原因になるのだそう。「免疫力を下げないために、抗酸化力に優れた食物を摂ることも重要」と、上西先生はいいます。
「抗酸化力の高い食物とは、ビタミンCやE、ポリフェノールが多く含まれる食材です。実は、キウイは抗酸化力の高い食品としても注目されています。以前、陸上競技選手の男子大学生20名に1日2個のキウイを食べてもらい、酸化に関わる血中の物質を調べました。すると、1ヵ月後、さらにその1ヵ月後も抗酸化力が高く維持できることがわかったのです(図参照)。先に紹介した栄養バランスのよい食事とともに、キウイなどの抗酸化力の高い食材を意識的に摂ることも大切でしょう」
グリーンキウイに含まれるビタミンCはレモンの約4個分、サンゴールドキウイは8個分以上(果汁換算)で、含有量はフルーツのなかでトップレベル。また、抗酸化力の要であるビタミンEもサンゴールド1個でリンゴ7個分に相当。ポリフェノールもたっぷり含まれています。
「ビタミンCとEは一緒に摂ることで相乗効果が得られるため、抗酸化力がさらにアップ。朝食やおやつ、食後のデザートなどにキウイを取り入れてみましょう。また、たんぱく質を分解する酵素も含まれているので、肉料理のソースなどに活用すれば消化を助け、栄養を吸収しやすくする効果もあります」
毎日のキウイで、ウイルスに負けない体作りを心がけましょう。