Bunkamura30周年記念
美しく青く

7月11~28日/東京・Bunkamuraシアターコクーン
作・演出/赤堀雅秋
出演/向井理、田中麗奈、大倉孝二、大東駿介、横山由依、
駒木根隆介、森優作、福田転球、赤堀雅秋、銀粉蝶、
秋山菜津子、平田満
☎03・3477・9999(Bunkamuraチケットセンター) 
※大阪公演あり

震災で一度は日常を失った人々。
その先にあるのは、希望か絶望か――

4月クールのドラマ『わたし、定時で帰ります。』では、無精ヒゲのWEB制作会社プロデューサー役を抑えた演技で見せ、実力派の萌(きざ)しを感じさせた向井理。実は多くの映像作品で活躍するかたわら、舞台作品にコンスタントに出演している舞台人でもあるのだ。

『悼む人』(2012年)では事件や事故の現場を訪れて犠牲者を悼む元会社員を、『小野寺の弟・小野寺の姉』(13年)では、姉役の片桐はいり(!)に振りまわされる奥手の弟を好演。17年には、ハードなステージングで知られる劇団☆新感線の『髑髏城(どくろじょう)の七人』にも挑戦した。そのどれもが高いハードルを課す舞台なだけに、あえてそういった作品を選ぶ本人の意思が見てとれよう。

さて、今回もなかなかのハードルである。作・演出は小劇場出身の劇作家・演出家の赤堀雅秋。自らメガホンを取った映画『その夜の侍』で、鉄工所を営む中年男役の堺雅人を泥の中で這いずりまわらせた人、といえばわかりやすいだろうか。赤堀が描くのは常に凡庸な庶民であって、しかも袋小路に迷い込んだ男や女だ。それはキラキラした“インスタ映え”とは正反対の、目を背けたくなるような世界なのだが、進行する舞台を観ているうちに、彼らがそう生きざるをえない理由が腑に落ちてくる。そして、その理由はまぎれもなく、自分自身がもつ心の奥の闇とつながっていることに気づくのだ。

本作で向井が演じるのは、震災で家族を失い、今は原子力発電所で黙々と働く青年。物語は仮設住宅を舞台に繰り広げられるという。日常のささいな出来事――それもわかりやすい「良いこと」ではなく、一見どうでもいいようなことが積み重なり、等身大の人物像が浮かび上がっていく。それだけに、役者にも相応の演技力が求められるのだ。本作では震災、そして原子力発電所という現在進行形のテーマが軸に据えられているため、さらにシビアだろう。

ただし、闇の中でもがく登場人物たちが、ラストで弱々しいが確かな光を見出すのも赤堀作品の特徴。「それでも生きていかなければならない」日々の、その先にある光景とは。その答えは、ぜひ客席から確かめてほしい。

 

 

 

お気に召すまま

7月30日~8月18日/東京・東京芸術劇場 プレイハウス
作/ウィリアム・シェイクスピア 演出/熊林弘高
出演/満島ひかり、坂口健太郎、満島真之介、温水洋一、
山路和弘、小林勝也、中村蒼、中嶋朋子ほか
☎0570・010・296(東京芸術劇場ボックスオフィス) 
※豊橋・新潟・兵庫・熊本・北九州公演あり

青年オーランドーは、公爵の姪ロザリンドと恋に落ちるが、兄のオリヴァーに命を狙われて森へと逃げる。それを知ったロザリンドは、男装して“ギャニミード”と名乗り、公爵の娘シーリアや召使のタッチストーンと森へ向かうが……。

若い演出家に新たな活躍の場を提供してきた東京芸術劇場が、同劇場で注目作を連発する熊林弘高と送る。さらに両者のタッグによる『かもめ』(チェーホフ作、2016年上演)で新境地を開いた満島ひかりと坂口健太郎が、今回もそろって出演。中嶋朋子や山路和弘ら手練の役者も集い、熊林版『お気に召すまま』が展開する。

 

 

 

ディミトリス・パパイオアヌー
THE GREAT TAMER

6月28~30日/埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
ビジュアル・演出/ディミトリス・パパイオアヌー
☎0570・064・939(SAFチケットセンター)
※京都公演あり

アテネオリンピック(2004年)では開閉会式の演出を担当。世界的に知られるヴッパタール舞踊団で初のゲスト振付家を務めるなど、ダンス界の最高峰をひた走るディミトリス・パパイオアヌー。もともと画家として著名だった彼は、ステージにも絵画や彫刻、現代アートの意匠を持ち込み、身体表現の可能性を探り続けている。

「偉大な調教師」のタイトルをもつ本作は、ダンス表現とインスタレーションによって夢幻的な世界を立ち上らせる“ダンス・シアター”。彩の国さいたま芸術劇場の後は、ロームシアター京都でも上演されるので、貴重な初来日公演を見逃さないで。