出来栄えも見事な利用者たちの工作。スタッフが用意した材料を切ったり貼ったりして仕上げた

「簡単すぎず、難しすぎない」が大事

利用者同士で問題を見せて助け合ったり、会話ができるようになった点も大きな変化だ。ただ会話が増えると、人間関係にも気を使わなければならない。人の集まりに、トラブルはつきもの。認知症のために適切なコミュニケーションがとれず誤解を生むこともあれば、相性の良し悪しもある。

「様子を見ていると、仲の良い人、あまり相性の良くない人というのがわかってきますから、楽しくやれそうな人同士が同じテーブルになるよう心がけています。また、コミュニケーションがうまくとれていないなと感じた場合は、間に入ってフォローすることもあるんですよ」

小野寺さんは、「認知症だからって、何もできないというわけではないんです。機能が低下しているのは、脳の一部だけ。できることはたくさんあります」とも話す。これは日々利用者と接するなかで実感していることだ。

それぞれの能力に合ったゲームを選ぶため、職員全員が利用者のできること、できないことを把握している。パズル一つとっても、どの人がどのレベルならできるかをわかったうえで、簡単すぎず難しすぎない、ぎりぎりのラインのプログラムを提供しているというから驚く。

「できないと意欲がそがれるので、見ていて手が止まっているなと思ったら、間髪入れず別のものに切り替えます。少し考えればできるくらいのことをどんどんやってもらって、達成感を味わってもらう。そうすると、自分からやりたいという気持ちが自然とわいてくるのだと思います」