「私」を前面に出した恋愛

小田部 愛子さまの将来に関わることで避けて通れないのは、皇位継承に関する議論です。現在の皇室典範では「男系男子が継承する」と規定されていますが、悠仁さまがお生まれになる2006年以前の男系男子は、当時皇太子でいらした天皇陛下、秋篠宮文仁親王、常陸宮正仁親王、三笠宮崇仁親王、三笠宮寛(右下に点)仁親王、桂宮宜仁親王の6人しかおられなかった。将来的に女性天皇を認めるか否かの議論が急務でした。

辛酸 当時、大変なことだ、何とかしなくてはというムードだったのを覚えています。

小田部 これまで、安定した皇位継承のための会議が小泉、野田、菅(義偉)の3つの内閣で開かれてきました。第1回は05年の小泉政権時で、女性天皇を容認する方向へと行きかけた。ところが安倍政権下では、「やはり男系がいい」という意見が強くなってしまいました。

辛酸 悠仁さまがお生まれになったことも大きいですね。

小田部 以来、女性天皇の話は立ち消えになってしまった。

山下 その代わりとして、「女性宮家」創設という妥協案が出てきたわけですよね。でもそれは、あくまで皇族数の減少対策に過ぎない。しかも今般、内親王だった眞子さんが「私」を前面に出した恋愛で結婚し、皇室を離れた。このことは、内親王には結婚後も皇室に残ってもらうという案に大きな影響を与えたと言ってもいい。

辛酸 たとえ女性宮家が誕生しても、それが一代限りなのか、何代も続くのかも議論が必要だと思います。たとえば、もし眞子さんと小室さんの家が女性宮家になっていたとしたら、イギリスの王朝みたいに「小室朝」ができたかもしれないということですよね。黒田朝、小室朝……などと無数にできていくことを想像すると、ちょっと受け入れにくいです。(笑)

2005年11月15日、結婚会見の会場へ向かう黒田清子さんと黒田慶樹さん(写真提供:読売新聞社)

山下 男系天皇論者にも、そう考える方が多いですね。系統が分かれることに抵抗が強いのでしょう。

小田部 ただ、女性宮家のお相手は婿なので「小室朝」とはなりません。

辛酸 現在の皇室典範のままだと、愛子さまはご結婚されたら皇室を出て、一般人として生きていかれることになりますよね。

小田部 法律的にはそうです。けれど、将来の天皇として期待されている間は、皇室を出ていきにくいでしょう。