専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、政治とマーケティングの専門家が、「辞職勧告決議案」と「令和元年あやかり婚」を解説します。

辞職勧告決議案

5月20日、丸山穂高衆院議員は、野党が提出した辞職勧告決議案について「言論の府が自らの首を絞めかねない行為だ。可決されても辞めるわけにはいかない」とコメント。辞職拒否の構えを見せていた

 

問題のある国会議員を「辞めさせる」方法

5月11日、北方領土の国後島を訪問中だった丸山穂高衆院議員(日本維新の会を除名処分)が、禁止されていた外出を試み、さらに酒に酔って下品な言動を繰り返したあげく、「北方領土は戦争で取り返すしかない」といった趣旨の暴言を吐いた。

野党は国会に、丸山議員に対する「辞職勧告決議案」を、与党は「譴責(けんせき)決議案」を提出した。辞職勧告と譴責はどう違うのか。「辞めなさい」というのと、「こら。だめじゃないか」と叱るのとの違いといえばわかりやすいか。実は、両方とも法的な拘束力はないため、本人が無視すれば辞職も謝罪も強制できない。

不始末をしでかした国会議員に対して処罰を与える正式な方法は、ほかにある。憲法第58条2項で「(衆参両院は)院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる」と規定されているのだ。懲罰の種類は、軽いほうから「公開議場における戒告」「議場における陳謝」「一定期間の登院停止」。そして、最も重い処分が「除名」、強制的な議員辞職である。

今回の問題で、なぜ懲罰ではなく、拘束力のない辞職勧告や譴責を与野党が出したのかといえば、発言が国会の外で飛び出したもので、「院内の秩序をみだした」と解釈するのが難しいからだ。

とはいえ、こんな国会議員にも、年間約1億円の税金がつぎ込まれていることを考えると、なんともいたたまれない気分になる。

なお、その後与党も態度を硬化させ、6月6日の衆院本会議で、与野党8会派から丸山議員への糾弾決議が可決された(事実上の辞職要求)。丸山議員の今後の動向が注目される。(伊藤惇夫)

 

 

令和元年あやかり婚

元号が「令和」に変わったばかりの深夜に婚姻届を提出したカップルも多数。全国各地の役所では、特設窓口を設置するなどして職員が「あやかり婚」の対応にあたった

 

改元が巻き起こした結婚ブーム!?

「1日は、婚約者と役所に着いたのが夜11時半。ギリギリセーフでした」と笑顔を見せたのは、A子さん(40代前半)。

彼女が言う「1日」は、新元号初日・5月1日のこと。婚約者は出勤日だったが、「なんとしても縁起がいい令和初日に婚姻届を出そう」と、役所の夜間窓口まで走ったそうだ。

A子さんたちのような結婚を「令和元年あやかり婚」と呼ぶニュースも目立った。とくに5月1日は大安も重なり、届出が増えたという。たとえば神戸市では、この日に提出された婚姻届は736件。例年一日約50件だというから、14倍以上がこの日に集中したわけだ。

結婚が増えれば、挙式や新婚旅行、出産などの盛り上がりも期待できる。結婚準備のクチコミ情報サイトを運営する「ウエディングパーク」の調査では、改元にちなんだプランを打ち出す結婚式場が、全国で81にのぼった。そのうち、「新元号スタート記念」など「改元(令和)婚」を謳うケースが6割を占めたという。(2019年4月1日時点)

千葉県浦安市のシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルは「令和元年記念」と銘打ち、19年12月末までの挙式カップルに特別プランを展開。一部の衣装レンタルが5割引に、指定旅行会社によるハネムーンが3%引になる。一方、通販サイト「たまひよSHOP」では、令和元年に生まれた赤ちゃん限定で、「令和元年」と印字した内祝いの商品展開をスタート。いずれもSNS等で話題だ。

人口減少と若者の結婚離れにともない、06年、年間73万組いた婚姻カップルは、26年には55.7万組まで減る見込みだ(18年リクルートブライダル総研調べ)。令和元年あやかり婚をもってしても、この先の婚姻率上昇は難しいだろうか?(牛窪恵)