孤独死があった物件の清掃や消毒に加え、お祓いや追善供養の費用が支払いの対象になる商品も。賃貸物件オーナーが当たり前のように加入する日も近いかもしれない
 
専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、経済ジャーナリストの荻原博子さんが、「孤独死保険」を解説します。

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◆超高齢社会が抱える課題をつきつける商品

賃貸物件の大家さんを対象にした「孤独死保険」が、保険業界で隠れたヒット商品となっています。

賃貸物件で一人暮らしの居住者が死亡した場合、部屋を原状回復したり、借り手がつかず空室になったときの損失に対処したりするための保険。この商品が売れている背景には、今後、大きな社会問題となっていくことが予想される「高齢者の孤独死」の問題があります。

国立社会保障・人口問題研究所によると、2040年には、全世帯の39.3%が一人暮らしになるそうです(2019年4月発表)。この数字には学生や社会人の一人暮らしも含まれていますが、顕著に増えるのは世帯主が65歳以上の一人暮らしで、高齢男性の5人に1人、女性の4人に1人は独居生活になるのだとか。そうなると、誰にも看取られない「孤独死」は、より身近で切実な問題となってくるでしょう。

実は先日、孤独死した人の遺品整理を行う会社の社長に話を聞く機会がありました。家族がいない人や、いても離れて暮らしている人の場合、ご遺体の発見が遅れることが多く、死後の現場はかなり凄惨な状況になるといいます。そうなると専門業者に清掃や処理を依頼することになりますが、「孤独死保険」に入っていると、その支払いに保険が適用されるのです。

ちなみに、孤独死した高齢者の多くは自宅に多額の現金を保管しており、その会社でも1年間に2億円ほど発見して遺族に返してきたのだとか。部屋を貸すほうも借りるほうも「最後はお金が頼り」とは、なんだか、寂しい時代になってきました。