ああ、みんな関心がないんだな

40歳から19年間お稽古を続けている長唄で名取となり、「杵屋勝之邦」を襲名することになりました。今年(2019年)の4月27、28日に行われた襲名披露公演は、平成最後の歌舞伎座での公演という特別なもの。そこで私は大トリをつとめることになっていたのですが、事務所のスタッフは誰一人として観に来てはくれませんでした。

ああ、みんな関心がないんだな。長唄にも、それに19年間打ち込んできた私にも。すごく悲しかったけれど、スタッフの仕事のジャンルと違うところで私は活動している、ということだと思うようにしました。

その2週間後くらいに、新宿の末廣亭で、長年続けているバスガイドさんのネタやモノマネをたっぷり盛り込んだ15分間の高座をやらせていただく機会を得ました。私の前が桂米丸さん、後ろが三遊亭好楽さん、大好きな演芸場でこんな素晴らしい先輩たちといっしょに。嬉しくて気合いを入れて準備をしました。

実はこの仕事は、デビュー当時の伝手をたどって自分で取ってきたもの。だからでしょうか、当日、マネージャーは現場に来ませんでした。これはショックだったな。長唄は関心がなくてもしかたがないと思えたけれども、演芸は関心がないではすまされません。

そして極めつきとなったのが、5月の後半から始まった40周年記念公演『山田邦子の門』です。これも事務所とは関係なく、長年のつきあいのあるプロデューサーがお祝いとして考えてくださった企画でした。

そのとき、ある酒造会社さんが、関係者のみなさんに差し上げるようにと、私の顔のラベルを貼った特別なお酒を100本ぐらい用意してくださっていました。楽屋のたくさんのいただきものの中にあったのです。それなのにその存在に終演まで私もスタッフも誰も気付かず、千秋楽が終わってから私の自宅に転送されてきて、開けてびっくり。毎日事務所の人は来ていたけれど、私が自分で開けなかったこともいけなかったでしょうね。

これが40年かけて私が作り上げてしまった仕事のチームだったんだなと思いました。どこかで何かがずれていたのかもしれません。だから今、この公演にたずさわった方みなさんに、お会いするたびにお酒をお渡ししています。