年齢を重ねるとともに、聴力も徐々に衰えていくもの。しかし、「年だから仕方ない」と聞こえにくさを放置していると、全身の健康にも大きな影響を与えかねません。俳優・歌手の菊池桃子さんが、補聴器メーカー・マキチエの平松知義社長から〝よりよい聞こえ〞を保つ方法を学びます

難聴の原因は加齢以外にも

菊池同居している87歳の母が、6年前から補聴器を使っています。きっかけは、聞き返しが多くなったこと。「もっとはっきりしゃべってほしい」と言われ、私の口の動きを読み取って会話する様子も見られたので、一緒に病院へ行きました。

平松補聴器を使うようになり、お母様に変化はありましたか?

菊池「よく聞こえる」と喜び、悩みごとがひとつ消えたように表情も明るくなって。その様子を見て、もっと早く聞こえの不調に気づいてあげればよかったと思いました。

平松補聴器を使い始めて、「なぜ今まで躊躇していたんだろう」と後悔される方は、とても多いんです。データによると、補聴器が必要だと感じる平均年齢は72歳。でも、その時点で聴力低下はかなり進んでいます。聞き逃しや聞き返しが多くなった、テレビの音が大きくなったなどの兆候が見られたら、ぜひ耳鼻咽喉科を受診していただきたいですね。菊池さんとお母様が最初に医療機関を頼ったのは、素晴らしい判断でした。

菊池まずは病院を受診することが大事なんですね。

平松はい。というのも、聴力低下の原因は加齢性難聴以外にも、耳垢の詰まりから腫瘍まで多岐にわたるのです。大きな疾患が隠れている可能性もありますから、必ず医療機関で診断を受け、その結果によって補聴器の使用を検討してください。

※JapanTrak2022調査報告

「聞こえ」が生活の質を決める

菊池人間の体って不思議ですね。「まだ大丈夫」と思っていても、いつのまにか衰えが始まっています。私が40代の頃、子どもたちが街中で「ここはモスキート音がする」と嫌がったことがありました。モスキート音は、年齢を重ねるほど聞こえにくくなる高い周波数の音。私にはまったく聞こえず、聴力の低下を実感しました。視力が下がれば眼鏡をかけるのに、聴力の衰えは「まだ大丈夫」と放置してしまうのはなぜでしょう。

平松「残念ながら、聴力の重要性は十分認識されていません。ですが、聴覚は生活の質を左右する大事な感覚です。川のせせらぎや鳥の声は景色を鮮やかに見せてくれますし、鉄板でお肉を焼く音は食欲を刺激してくれる。聞こえが悪くなったことで働き続けることができなくなるなど、経済的な損失もあります。

菊池私は音楽活動をしているので、今のお話は他人事ではありません。曲作りの際には、私の声や楽器の音色を多層的に重ねていくので、すべての音を聞き逃したくなくて。仕事を続けるうえでも、聴力をできるだけ長く維持したい。人生100年時代を迎えたいま、お年を召しても働く方が増え、聞こえはますます重要になりそうですね。

平松はい。それに、聴力低下はさまざまな健康リスクにつながります。周囲とうまくコミュニケーションを取れなければ認知症やうつ病を招きかねませんし、自分の足音が聞き取りにくいと転倒しやすくなってしまう。

菊池聴力の維持には、どのような対策が考えられますか?

平松聞こえの状態を知るためにも、耳鼻咽喉科で定期的に精密な聴力検査を行うことをお勧めします。

菊池記録を残すって大切ですよね。血圧や血液検査などのデータも経過を追うことで異変に気づけますし、耳も同じように考えればいいんですね。

平松聴力は40〜50代から徐々に衰えていきますから、自覚症状がなくても年に1度は検査を受けておくと安心です。

菊池いいことを伺いました。目安にしたいと思います。

平松病院選びも重要です。ひと口に耳鼻咽喉科といっても、アレルギーやめまいの専門医もいます。ですから、補聴器の専門医、なかでも「補聴器相談医」の認定を受けた医師のいる医療機関を選ぶといいですね。また、補聴器は買ったら終わりではありません。音の聞こえ方に早く慣れるためにも、補聴器相談医と販売店が連携しながら細かく調整し、〝よりよい聞こえ〞を作り上げていく必要があるのです。

  • 耳かけ型(RICタイプ)
    スピーカーと補聴器が分離した人気の新タイプ

  • 耳あな型
    耳の中に納まり、マスクやメガネと併用しやすい

  • ポケット型
    液晶画面とボタンが大きく、操作が簡単