専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、政治アナリストの伊藤惇夫さんが、「〇〇責任」を解説します。
取るのか、取らないのか。政界ならではの流行語
「永田町の常識は、世間の非常識」なんて格言(?)が存在するほど、政治の世界と一般社会では何かとズレや落差がある。
最近、永田町でよく聞かれるのが、「〇〇責任」という言葉。具体的には「任命責任」や「説明責任」だ。一般社会で「責任」といえば、取るものであり、果たすものだが、政界ではちょっと違うらしい。
2019年10月には、9月の内閣改造で初入閣した菅原一秀(前経済産業大臣)、河井克行(前法務大臣)の両氏が、就任からわずか1ヵ月あまりのうちに辞任。菅原氏は地元選挙区の通夜で公設秘書が香典を渡し、河井氏は妻の河井案里参院議員が、参院選挙で運動員に法定額を超える報酬を渡したという公職選挙法違反疑惑が原因だった。
10月31日、これを受けて安倍総理は、いつものように「任命責任を痛感している」と発言した。どうやら責任を「痛感」はしているものの、「取る」つもりはないようだ。
12年の第2次安倍政権発足以降、スキャンダルや失言が原因で更迭や辞任に追い込まれた閣僚はこれまで10人に及ぶ。だが、安倍総理が具体的にどう責任を取ってきたのか、筆者にはさっぱり記憶がない。
さらに、安倍総理は菅原・河井両大臣について、「説明責任を果たすべきだ」といった趣旨の発言をしたが、その後、この2人と河井案里氏は説明責任を果たすどころか、一度も国会に姿を見せなかったため、野党からは、「捜索願を出したら?」とまで言われる始末。
永田町に限っては、「責任」という言葉が、どんどん軽くなっているようで……。