新型コロナウイルスの影響ですでに倒産に至ったホテルも。来年夏の五輪・パラリンピック開催までに、再びホテル業界に活気は戻るだろうか
専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、商品ジャーナリストの北村森さんが、「ホテル業界の危機」について解説します。

コロナ禍に五輪延期……逆風に直面して

新型コロナウイルス禍により、あらゆる業界が危機に瀕しています。なかでも厳しい業界のひとつが、ホテルですね。

2019年を振り返ると、東京をはじめとする大都市圏のシティホテルは、客室稼働率が軒並み80%を超える活況でした。本来であれば、ここに今夏開催予定だった東京五輪・パラリンピックの効果が加わり、稼働率は80%どころではなかったはず。それがコロナ禍で一転、逆境に……。稼働率30%を割り込むホテルも少なくないと聞いています。ある地方都市の一番手ホテルは「1泊3000円でも泊まってほしい」と常連客に声かけしているそう。

どうすればいいのでしょう。その打開策を私などが軽々に語るのもはばかられる状況ですが、やはり苦境に立つ飲食業界から、ひとつのヒントになるかもと感じさせる動きが現れ始めています。「未来のために先払いしてもらう」という取り組みを始めた飲食店やIT系ベンチャー企業が登場しているんです。

今は食べに行けないけれど、その飲食店を応援するために、消費者はお金を先に払う。で、この事態が終息したら食事に行く。そして飲食店は、先払いしてもらったお金で当座をしのぐ、という仕組み。たとえばGigi株式会社が提案する「さきめし」という活動プロモーションがそうです。

これ、ホテル業界でも実現できないでしょうか。私は好きなホテルに先払いしますよ。

例年なら満室続きなのに今年は予約がほぼないという、ある人気リゾートホテルの担当者は言います。「我々は今こそ、以前の成功体験を忘れるべき。自分たちの売りは何か、訪れた人に何を提供できるか、何を約束できるのか。それらを見つめ直す機会にしたい」。

こんな考えのできるホテルを応援したい!