
地震や豪雨などで家族や住まいを失った人々、医療をはじめ、支援の手が届きにくい高齢過疎地域の住民、困窮のため、十分に食べられない子どもたち……。世界を見渡せば課題が山積し、私たちの社会では、いつもたくさんの人が支援を必要としているのです。一人ひとりが行動を起こすことが、誰かの助けになります。遺贈や寄付など、あなたができることについて考えてみませんか

募金からコミュニティづくりまで
支援は継続が大事だと実感。
助け合うことで仲間も増えていく
中尾ミエ
被災地支援をはじめ、さまざまなチャリティ活動を行っている中尾ミエさん。その時々で、友人や知人、地域の方々と協力しながら続けてきました。助け合って生きることの大切さを語ります
後に残る支援はなんだろう
2004年に新潟県中越地震が起きた時、大変な出来事でしたから、自分に何かできることがないだろうかと思いました。三人娘(中尾さん、伊東ゆかりさん、園まりさん)が再結成する時だったので、コンサートで募金活動をしてみようと。私たちは人がたくさん集まってくれるところで仕事をしていますから、それを生かさないともったいないでしょう?
一度きりの寄付ではなく、震災後のみなさんの生活に役立つ持続的な取り組みにしたいと思い、新潟でお米のブランドを作りました。「可愛い米ビー(ベイビー)」という名前でね。化学肥料不使用のお米で、今も続いていますよ。
07年には、加藤タキさんなど友人3人と一緒に「チーム ソルトン セサミ」というチャリティ活動グループを作りました。チャリティパーティを開いて、多い時はお客さんが500人くらい集まったことも。毎回、さまざまな支援団体の活動を伝えて、パーティのお客さんからの寄付を募っていました。支援先をどこにするかは、4人でよく調べて相談して。この活動は10年くらい続きましたね。
東日本大震災の時は、三人娘であしなが育英会に義援金を送りました。それから、友人で政治学者の福岡政行さんが被災地へお地蔵さんを届けるプロジェクトを始められたので、私も参加することに。14年には福島県飯舘村、その後もあちこちに建立しました。福岡さんはいろいろな支援活動をなさっているので、毎年のように一緒に行きましたね。被災地以外にも、アジアの子どもたちの支援でカンボジアなどに足を運んだことも。
支援で大切なのは、継続することだと思います。被災地へ行くと、災害発生後、食べ物などはたくさん届いていたりします。届きすぎて、ありがたいけれど捨てなければいけないこともある。実際に現地に行くなかで、後に残る支援はなんだろうと考えるようになりました。
遺産はすべて寄付するつもり
24年の能登半島地震では、輪島市の市長さんに義援金をお渡ししました。実はコロナ前に、輪島市の空き家を購入していたのです。でも古民家だったので、地震で全壊してしまいました。
どうして輪島市で家を買ったのかというと、理想的なコミュニティがあったからです。「輪島カブーレ」という街づくりプロジェクトが行われていて。空き家や空き地を活用し、高齢者や障害のある人、子育て世代や若者、移住者、外国人などがごちゃ混ぜで共生するエリアがあるのです。中心には温泉があって、徒歩圏内に市場やお店、ジムなど、なんでも揃っています。
そこではみんなが協力し合って生活し、自分で自分のできることを探す。学生が介護のお手伝いをすると、報酬をもらえたりします。テレビで取り上げられているのを見て興味を持ち、街づくりの責任者に直接連絡して会いに行きました。それでお友達になり、自分も住まいを持つことにしたのです。
年を重ねるとみんな、一人ぼっちになったらどうしようとか、老人ホームは寂しそうだとか、悩むでしょう? ここならいろいろな人たちと関わることができて楽しいなと。一緒にいると、人は自然と助け合うものです。
東京の自宅でも近所の人たちと支え合って暮らしています。60歳の頃、自宅の隣にアパートを建てました。家賃を相場より少し安く設定して、若い人たちに入ってもらって。もう20年近く経ちますが、最初に入った方々がまだ住んでいます。
日頃からDIYを手伝ってもらったり、みんなでバーベキューをしたり。私の家のどこにキッチン用品があるか、全部教えてあるので、みんな勝手に準備してくれますよ。
毎朝、近所の人たちと公園に集まって体操もしています。参加者は20人くらい。先日、最高齢の87歳の方が圧迫骨折をしたのだけど、無事に快復されて。毎日運動をしているから寝たきりにもならず、お元気です。
少し前、近所を走る小さなバスが赤字で廃止されるかもしれないという噂が流れました。なくなると、高齢者はみんな困ってしまう。そうしたら、一人が署名活動をしようと声を上げて。ご本人がびっくりするくらい、たくさんの署名が集まりました。
公園で集ううちに少しずつ仲間が増えて、やがて「何かしよう」と行動が広がっていく。人間は群れて生きる動物で、リーダーが必要だと思います。「誰かやってくれないかな」ではなく、自分で動いていかないと。
年をとると体調は悪くなる一方なのだから、今日できることは今日やらないと時間がもったいないとも思うようになりました。来年は80歳になりますから、そろそろちゃんと遺言書も準備しないといけません。
子どもがいないので、遺産はすべて寄付するつもりでいます。誰かに任せるのではなく、自分が納得できるところに寄付したい。やっぱり、人が集まるような場所がいいかな。人は一人で生きていけないのだから、助け合わないとね。

中尾ミエ(なかお・みえ)/歌手・俳優
1946年福岡県生まれ。62年「可愛いベイビー」で歌手デビュー。以降、ミュージカル、コンサート、映画、テレビドラマなど多方面で活躍。TOKYO MX『5時に夢中!』の金曜コメンテーターとしてレギュラー出演中。近著に和田秀樹さんとの共著『60代から女は好き勝手くらいがちょうどいい』がある
『婦人公論』1月号「あなたの思いが未来を創る」 企画では、下記の団体を紹介しています
- 国立成育医療研究センターhttps://www.ncchd.go.jp/
- 日本自然保護協会https://www.nacsj.or.jp/
- 交通遺児育英会https://www.kotsuiji.com/
- 日本対がん協会https://www.jcancer.jp/
- 日本ユニセフ協会https://www.unicef.or.jp/
- 国境なき医師団https://www.msf.or.jp/

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