2020年6月9日号

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[特集]
〈私たちの「ノンフィクション」〉
泣いて笑って、人生は豊かになる

晴れの日も、雨の日も、人生に起きたことすべてが私の糧になる──。本誌恒例企画、読者の皆様から多数お寄せいただいた「ノンフィクション原稿」のなかから、編集部が珠玉の6篇を選出いたしました。つらく厳しい現実を、ひたむきに乗り越えんとする方々の声とともにお届けします

●注目記事●

〈子どもは親の面倒を見て当然、という呪縛〉
パーキンソン病の母に〝恩を返す〟。
感謝されることはとうに諦めて

孫が生まれることを喜ぶよりも、自分が世話をしてもらう時間が削られるのが心配。そんな親のためによかれと思ってしたアドバイスも激怒され──

12年前、隣の市に住む実母から、頻繁に電話がかかってくるようになった。それまでも、日々のつれづれを語る一方的な電話はよくかかってきていたが、そのころには、回数が1日3回と、定期連絡めいてきていた。めまいや手の震えがひどいらしい。近くの医院で診てもらうと、「本態性振戦」と診断が下されたそうだ。いかに具合が悪いか、子どもに頼れなくていかに心細いか、自分がどんなに頑張って日常生活を送っているか、延々と私に言い聞かせる。

69歳の母は、75歳の父と2人暮らし。子どもは私と姉の2人で、それぞれ違う市に嫁いでいる。母はかねて、「私とお父さんは、2人で暮らしていけるだけのものは十分持っているし、あんたたちに迷惑をかけるつもりはない」と豪語していた。そのあとに、「だから、あんたたちは親に頼ることなく、自分たちの力で生きていって」と続く。

言われるまでもなく、頼るつもりは毛頭ない。孫のお守りをしてもらったことも、生活費の援助を願い出たこともない。母は私たちから助けを求められることを極端に嫌がったし、何より私たち姉妹が婿をとらずに、他家に嫁いだのを許していなかった。

「外孫の面倒なんて見たくない。見る甲斐もない」

「どうせ私たちに何かあっても、誰も助けてくれない」

聞こえよがしに言って、私たちがどんな表情をするか横目でうかがう。人にバツの悪い思いをさせるのが、この人の大好きな遊びだった。(一部抜粋)


他にも、「相続は血とともに流れた──。住み慣れたわが家を旅立つ朝の景色は」、「産後うつで離婚。死線をさまよい、発見されたときは骨と皮ばかりに」など、衝撃のノンフィクションが。読後感インタビューは高橋源一郎さんと田嶋陽子さん。池袋暴走事故遺族の松永拓也さんのインタビューなどが掲載されています。

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[告白]

〈「このハゲ〜!」騒動から3年〉
終わりのない後悔と絶望
顔を上げて歩けないと思っていたけれど

豊田真由子

2017年、週刊誌の報道で秘書への暴言が明るみに出て、世間から大バッシングを受けた豊田真由子さん。順風満帆だった人生が一変しました。当時のことは「パニック状態で記憶が定かではない」というものの、沈黙を貫いてきた3年をどう過ごしてきたのでしょうか

現在、新型コロナウイルスにどう立ち向かうか、テレビで解説する機会をいただいていますが、出演オファーをお引き受けするまでは、ずいぶん悩みました。「あいつの顔など見たくない」といった視聴者からの抗議が殺到したらどうしようと、不安だったからです。

最初の出演は3月9日。当日の放送までどなたにも言っていませんでしたが、ずっと支え続けてくださった方々から、「うれしくて泣きながら観たよ!」というメッセージをいただきました。また一般の方々からも、思いがけず好意的なお言葉をたくさんいただき、少しホッとしたところです。一方で、私の出演を疑問視する声も聞こえてきます。当然ですよね。たとえどんな事情があろうと、私は決してしてはならない言動をしてしまいました。申し訳なく、いたたまれない思いは、今もずっと続いています。

あの騒動以降、私は人目を避け、隠れるように暮らしてきました。いろいろなメディアからのオファーも頑なにお断りしてきたのに、なぜ今回はお受けすることにしたのか。話は、新型コロナウイルスに関する第一報が流れた1月初旬に遡ります。(一部抜粋)

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[読みもの]

〈公務員一家から歌手の道に進んだ"異端児"〉
大好きな母ちゃんに
孫を抱かせてあげたかった

西川貴教

力強い歌声に華やかなビジュアル、そして関西ノリの軽妙なトークで人気者となった西川貴教さん。引っ込み思案だった少年を変えた音楽との出会い、地元に住む家族への愛をたっぷり聞きました

昨年10月からこの3月まで、NHKの朝ドラ『スカーレット』に、芸術家のジョージ富士川役で出演していました。作品の舞台になっていたのは、僕の出身地である滋賀県。放送以降、地元に戻るたびに年配の方から「ドラマ見てたよ!」と声をかけられるようになりました。朝ドラの影響力ってすごいですね!

いまでこそ僕はエンタテインメントの世界で仕事をさせていただいていますが、育ったのは芸能とは無縁の公務員一家でした。役所で働いていた父、歯科衛生士の母、警察官だった祖父。教職に就いている親戚も多い。子どもの頃は、共働きの両親の帰りを待つため、妹たちと祖父母の家に行っていました。親が迎えに来てくれるまで、祖父母や叔父たちと過ごすのです。

叔父といっても皆まだ20代で、当時流行っていたフォーク、ロック、ニューミュージックを一緒に聴いていました。村下孝蔵さんを初めて聴いたのもこの頃です。かなりませた小学生ですよね。(笑)

子ども心に「大人に相手をしてもらうには、彼らが喜ぶことを言わなきゃいけないんだな」と感じていたので、常に自分なりにアンテナを張り、場の空気を読んでいました。僕のトークを面白いと言ってくださる方もいますが、もしかしたら、子ども時代の経験が役に立っているのかも。(一部抜粋)

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[連載]

婦人公論井戸端会議2020
司会=重松清
ゲスト=新井紀子/羽生善治
AIと仲よく生きるには?

三人が手にするロボット。実はこのすべてにAI(人工知能)が搭載されています。スマホや家電にもAIが使われ、身近で便利な存在になる一方で、脅威を感じるとの声も聞こえてきます。でもAIっていったい何?ゲストは将棋ソフトを活用している棋士の羽生善治九段と、東大入学を目指すAI「東ロボくん」の育ての親である新井紀子さん。最先端のAI技術に触れるお二人が描く未来とは─?

重松 「AI」という言葉が今、時代のキーワードになっています。AIが仕事を奪うんじゃないか、人間の能力を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)は来るのか……議論は盛んです。僕が最近気になったのは、2019年末の『NHK紅白歌合戦』に登場した“AI美空ひばり〟です。「感動した」という声がある一方で、「違和感がある」など反発もありました。羽生さんはご覧になりましたか?

羽生 ついに、こういうことまでできるようになったのか、というのが率直な感想でした。ただ、歌は人の主観に訴えるもの。美空ひばりさんは昭和の象徴的な存在でもあるので、どう受け止められるか、大きな挑戦だと思いました。

新井 私の所属する国立情報学研究所には、病気などで声を失った人が、過去の音声データを元に本人そっくりの合成音声で話せる技術の研究をしている教授がいます。その人によれば、3分から5分の録音した音声があれば、かなりの精度で復元できるそうです。美空ひばりさんの場合は膨大な量の音源があるので、さらに精度の高いものができるでしょう。ただ、好きか嫌いかは分かれるでしょうね。

重松 と言いますと?

新井 歌唱データはデビュー時から晩年まで蓄積されています。同じ美空ひばりさんでも、「リンゴ追分」の頃と「川の流れのように」の頃では、声質も、キーの高さ、歌い方も違っているはず。それらを数値化して、全部混ぜ、平均をとるのがAIです。だから、のっぺりした感じというか。

重松 僕が小説を書く人間だから思うのかもしれませんが、僕たちは、美空ひばりさんの歌を、「戦後の復興期に国民に勇気を与え、私生活では不遇の時代や大病もあって……」という物語と一緒に聴いている。そういう数値化できないものをまとっていない気がして、“AI美空ひばり〟は、僕にはすごく違和感があったんです。

羽生 先ほど「美空ひばりさんは象徴的」と言ったのもそこです。苦しい時代をみんなが共有し、歌声を聴くとそのときどきの万感の思いがこみ上げる。現代は多様化しているので、そういう方はいませんが。
(一部抜粋)


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追悼企画
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岡江久美子さん
いつも楽しく 生きるためのメッセージ

などなど、盛りだくさん。ぜひご一読ください!!

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