プロデュース能力はすごい
叶井 でもさ、江戸木さんには本当に迷惑かけたよね、ギャラの件とかさ。
江戸木 そのときは「えっ」て思ったけど、「後でもっと払いますから」って言って、実際にその通りにしてくれましたから。最終的には今までの付き合いで、マイナスを何倍にもして返してくれてます。有言実行で、仕事の処理もすごくしっかりしてるから、さすがだと思うよ。
叶井 適当だけどちゃんとやってたってことだよね。
江戸木 破産したときは「お金もうないから払えません」っていうんで、「何言ってんだよおまえ」って言ったけど。
叶井 次の会社でちょっと原稿料を上乗せして払ったよね。
江戸木 そうそう。処理が早いし、納期もしっかりチェックするから、プロデュース能力はすごいと思うんだよね。原稿依頼するのでも締め切りのときに、ちゃんと連絡来るからね。
叶井 「今日締め切りですよ」って電話とメールでダブルでするからね。
江戸木 がんになった今でも病院からもそれをやってくるから。
叶井 末期がん患者が締め切りを催促するって、あんまりないですよね。
江戸木 さすがにスルーできない。
叶井 基本的には今までよくこれだけやったなっていう気がするね。
江戸木 30年間、よく毎月映画をリリースしたよね。いろんな会社と仕事してきたけど、叶井俊太郎との仕事がたぶん一番多いですよ。
叶井 数的に言ったらそうかもね。
江戸木 もう思い出せないのとかも含めたら数え切れないもんね。『ムカデ人間』ひとつやるのでも、コピーを出すのに10個20個案を出すんですよ。だからやってきた仕事量といったら大変なものだと思う。
叶井 すごい数だよね。
江戸木 ほかの会社とも仕事をするけど、今、普通の会社ではそんなにハードなコピーって出せないんですよ。でもあなたの場合は、「それ、やり過ぎでは?」っていうヤバいコピーを、もっとハードにって押してくるからね。映画ってさ、合議制で会議で売り方を話し合うより、センスある人が独裁的に1人で決めたもののほうが面白いんだよね。
叶井 まあね。
江戸木 会議で邦題どうしようって、2時間話し合って決めた映画なんか絶対ヒットしない。公開しても1カ月後にはみんな忘れてるっていうのが多いね。
叶井 そうだね。