概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める伊藤俊行編集委員と、元キャスターの吉田清久編集委員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

文部科学省は10月、旧統一教会をめぐる高額な献金や霊感商法の問題を受け、教団に対する解散命令を東京地裁に請求した。なぜ、悪質な活動は長年続いたのか。司法の場に移る今後の手続きを見守りながら、被害者の救済に向けた取り組みを進める必要がある。紀藤正樹、菅野志桜里の両弁護士を迎えた10月12 日の放送を踏まえて、編集委員2氏が語り合った。

教団解散請求急がれる救済

証拠を積み上げて請求

「政府は、高額な献金を求める教団の働きかけが継続的に行われていたことについて、1年をかけて、かなりの証拠を集めている。今回の請求に自信を持っていると思う」=紀藤氏

「教団に与えられた宗教法人格は、税制上の優遇を受けられるなど、資金集めを容易にしてきた。政府として、お墨付きをはがすということなので、本当に大きな一歩だ」=菅野氏

伊藤2022年7月に起きた安倍晋三・元首相銃撃事件をきっかけに、旧統一教会をめぐる問題が次々と明らかになりました。文科省は、宗教法人法に基づく質問権の行使や、被害を訴える元信者らへの聞き取りなどを通して、献金集めの手法や教団運営の実態などの調査を進めてきました。その結果、教団の活動には、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」や「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」が認められると結論付けました。行政機関が法令違反を理由に宗教法人の解散命令を請求するのは、オウム真理教などに続いて3例目。これまでの2例は、教団幹部らが刑事事件を起こしたことを法令違反の根拠としていました。高額な献金被害など、民法上の不法行為を根拠とする請求は初めてになります。

解散命令を請求するかどうかは、行為の「組織性」「悪質性」「継続性」から判断されます。紀藤さんは番組で、文科省は、悪質な行為が継続的に行われてきたことに重点を置いて、全国各地で資料を収集したと説明されました。教団は、2009年に「コンプライアンス宣言」を行い、「現在まで継続して改革を推進してきた」と主張しています。政府は、宣言後も被害は続いており、改善していないことを明らかにするために、170人を超える被害者らへの聞き取りを行い、5000点を超える証拠を提出しました。

「解散命令受けるような教団でない」反論©️日本テレビ

吉田東京地裁は今後、文科省と教団の双方から非公開で意見を聞いた上で、解散命令を出すかどうかを検討します。政府は丁寧に手続きを進めてきたと思いますが、刑事事件を根拠にするこれまでの請求とは異なるため、認められるかどうかは、そう簡単には見通せないとの見方もあります。政府は従来、解散命令に必要な法令違反は刑事事件を起こした場合に限られるとしてきましたが、民法上の不法行為も入りうると解釈を見直して、請求しました。教団は「解散命令の要件を満たすような活動はしていない」と否定しており、審理を見守る必要があります。

「解散命令受けるような教団でない」反論©️日本テレビ

仮に東京地裁が解散命令を決定しても、教団は最高裁まで争うことができます。請求から解散が確定するまで、オウム真理教の場合は約7カ月でしたが、霊視商法詐欺事件を起こした明覚寺の場合は約3年を要しました。解散命令が確定した場合、教団は宗教法人格を失い、税制上の優遇を受けられなくなります。宗教法人格を奪うかどうかは重い判断です。判断が確定するまで時間がかかる可能性があります。

「解散命令」なら”統一教会”活動は?©️日本テレビ