ここ数年は『ハロルドとモード』という舞台に出演しています。80歳くらいのおばあさんと青年の話で、以前、芝居で観ていいなぁと思い、2020年からジャニーズの若い人たちと共演しています。2人は仲良くしているうちに、恋愛めいた感情を抱くようになるけど、結局、自分の年齢を意識せざるをえない。それで別れが訪れたとしても、私もあんなふうに生きて死ねたらいいなと思います。
年齢がうんと離れた人とお稽古をすると、私たちの世代が思ってもみないようなことを言ったりするので、「へぇ~、若い人はそういうふうに考えるんだ」と思ったり。そんな刺激も、私にとってはプラスになりますね。
考えてみたら私は、NHKのテレビ女優第1号として、テレビの歴史とともに仕事をしてきたわけでしょう。「昔は生放送でドラマをやっていた」と言うと、みんな「え~っ!」と驚くけれど、それしか方法がないとなると、人間ってやれるものだから。
そのうち録画ができるようになり、モノクロからカラーに、デジタル放送にと変わっていって……次々と新しいことが出てくるたびに、「へぇ~っ、そうなんだ」と、面白がりながらやり続けてきました。
社会人になってからは、誰かに盾突いたり喧嘩したことは一度もなかったですね。お勤めをすると誰でも経験があると思いますが、突然、方針を変えられたり、理不尽なことを言われたりもするじゃない。でも、私は波風を立てるのは嫌いなの。事を荒立てても、いいことは何もないと思っているから。
もちろん、「ハイ」と言いたくないときや、内心「それはおかしいんじゃないの?」と思うこともありますよ。でも私はあえて、「ハイ、わかりました」と言うことにしていました。
しばらくしてから、「確かに相手の言う通りだった」と納得することもあれば、「やっぱりこの人は間違っていた」と思うこともあります。でも相手が間違っていたら、そのうちだんだん、向こうもわかってくるし。そんなもんじゃないかしら。