「ウケ狙いは必ずスベる、ってセオリーなのかもしれないね」(レキシさん) 撮影:木村直軌

 

レキシ ユザーンがスベり倒した後、ライブはおかげで盛り上がりましたよ。1回落ちるところまで落ちると、人間はその分がんばりますからね。「最初にどん底まで失敗すれば、あとは必ず大成功する」という歴史上の教訓です。

清水 そんな教訓ないよ。もう、詭弁だけ上手いんだから(笑)。実は私も似たような経験あるよ。「今日は、楠田枝里子さんがいらっしゃってます!」ってMCから振られたあと、楠田さんの声真似でステージに出ていったら絶対ウケる、と言われて。信じて出ていったら、客席はシーン。(笑)

レキシ その手のウケ狙いは必ずスベる、ってセオリーなのかもしれないね。

 

初日で後悔した壮絶な「修行」

清水 私、ユザーンさんのツイッターが大好きで、よく見てるの。面白いよね。つい先日は、中華料理屋のメニューがなぜか全部生の野菜の写真、という不思議なお店のことを呟いてた。「このメニューをつくった人は、写真を撮るのは調理後にしようと思わなかったのだろうか」って。そういうヘンなお店や人や出来事を引き寄せる運を持ってるんだね。

ユザーン いや、たぶん誰の日常にも面白いことっていっぱい転がってるものなんだと思いますよ。

清水 今日は、アートイベント「あいちトリエンナーレ」で、40日間のタブラ修行を終えて帰ってきたばかりなんだよね。

ユザーン そうなんです。インド古典音楽の世界には40日間練習に没頭し続ける「チッラー」という修行があるんですが、これを公開イベントの形にしたインスタレーションで。面白そうだし、練習もいっぱいできるからいいかなと思っていたんですけど、実際やってみるとめちゃくちゃ大変で……。そもそも練習って、できないことを繰り返しやるものじゃないですか。

清水 そうだね。

ユザーン そんなこと、人前でできないんですよ。来場者には練習だとか本番だとかそんなことは関係なくて、ミュージシャンの演奏を楽しみに来てるわけだから。そのことに初日で気づいて、以降は結局1日中ソロライブをすることになってしまった。