「お正月は家族揃ってこの山の家で過ごすのが恒例。そのくらいの距離が、ちょうどいいみたいです」

彼に「田舎で機織りしたい」と言ったら、「富士急沿線のあたりに行けばそういう家が見つかるんじゃない?」とアドバイスをくれました。

それですぐに電車で大月まで行き、たまたま見つけた不動産屋さんで、「囲炉裏と五右衛門風呂がある茅葺きの家、ありませんか?」と聞いたら、あったのよ! それで、すぐに引っ越しました。すごいボロ家だったので、20代の女の子がよく一人で住めるね、と言われたけど。

そのうち子どもができたから、東京の助産院で産むことにしたの。だからその時の2ヵ月くらいが、夫と暮らした最初で最後の時期。すぐに大月に戻って、一人で子育てを始めました。

夫とは正式に結婚はしたけど、一緒に暮らそうとか、別々に暮らそうとか話し合ったわけでもなく、なりゆきで別々に生活するようになったというか。きっと、一緒に暮らしていたら別れていたと思う。

でもね、仲はいいのよ。今住んでいる家も、彼と一緒に考えて建てたものです。節約のため枠組みだけ大工さんに建ててもらって、二人で壁を塗ったりして。彼のほうが多くお金を出してくれました。その後夫は映画会社を辞めてフリーの監督になったんですが、あまり売れなくて。(笑)

そんな両親を見て育ったからか、息子は堅実で、石橋を叩いて渡るタイプ。大学卒業後は大学院に進んで研究者になるのかなぁと思っていたら、さっさと企業に就職しました。家族のなかで、一人だけ異色よね。両親を反面教師にしたのかな。

夫と会うのは年に数回。私が東京で用がある時には彼の家に泊まるし、コロナ前は年に1回、一緒に東南アジアなどに旅行にも行っていました。お正月は家族揃ってこの山の家で過ごすのが恒例。そのくらいの距離が、ちょうどいいみたいです。ちなみに夫も息子も料理が上手だから、三人一緒の時はわが家の男たちが料理をしてくれます。