会話がないとしんどい場所

──朝の公園じゃなくても、社交的な場……例えばレセプションパーティーに呼ばれることって、たまにありますよね。そういうところでは「誰かとしっかり30分話し込む」というわけにはいかなくて、3分くらいでまとまる話をしないといけない。僕はそれ苦手なので、あまり行かなくなったんですけど。

久保 だから、これから新しい人と仲良くなるには、短い話をできるようになるしかないんだよなあ……。難しい。なんで私、こんなに話長くなっちゃったんだろ?

──公園で会う人とは短く話すしかないでしょうけど、犬友と一緒にお出かけしたら長く話したりはするんでしょ?

久保 りゅうちゃんの散歩をしながら、犬を飼ってない友達とロング散歩したことがあるんですよ。散歩しながらダラダラと話すのって、面と向かって話すのとはちょっと質感が違ってて。

──目線を合わせずに、二人とも同じ方向を見てるから。

久保 そう、ずっと同じ方向を見ながら話すんだよね。あと、目に入ってきたものについて話したり。「この家の表札、面白いよね」とか、「こんなに池袋から離れてるのに、よくアパート名に『池袋』って付けるよね」とか。深い話をしようと思わずに、そういう外堀の話からふいに深い話に行ったりして、けっこう新鮮でしたね。

──付き合う直前の恋人みたい(笑)。

能町 特に意味のある会話をしてるわけじゃないんだけど落ち着く、みたいな。

久保 そうそう。でも、もしマッチングアプリで「この人と付き合うかどうか?」を念頭に置きながらそういう会話ができるかと言ったら、多分できないと思うんですよね。普通の友達だからできるというか。犬を介してのロング散歩会話はダラダラ話していいし、途中で話がぷっつり終わっても再開しやすいし。

──テーブルで面と向かってるわけじゃないから、会話が途切れてもただ散歩を続ければいい。

久保 だから犬を飼ってる人と公園からお家まで長く一緒に歩いていると、いろんな話を聞ける。だけど職業や名前までは聞かないという。

「2023年12月24日のこじらせライブより」

能町 「なにされてるんですか?」とはお互いに聞かないんですね。

久保 絶対に聞かないです。

能町 すごい。そういうふうになるんだ。

久保 向こうが勝手に話してくれるまで待つ。それで例えば「実はあの人と年齢が一緒で、カオリって名前も一緒だったの~」と言われて初めて、「あ、この人はカオリさんなんだ」とわかる、みたいな。それでも上の名前は知らないままなんだけど。でも、名前や職業を知らなくても、身の上話は案外できるもんだよ。

能町 女子限定っぽいネタなんですけど、私、会話で一番困る空間があって。ネイルサロンが……。

ヒャダ ああ、それは……。

能町 もう全然、行かなくなっちゃったんですけど、ネイルサロンって3時間くらいいるんですよ。

ヒャダ そんなにかかるんですか?

能町 ジェルネイルの場合は。しかも位置的にほぼ対面なんです。めっちゃ至近距離。会話しないのが不自然な距離なんですけど、最初に行ったときにマジで困って。ちゃんとネイルサロンに行ってみようと思って、友達が行ってるところになんとなく行ったんですよ。歌舞伎町にあって、「歌舞伎町のネイリストとしゃべることないな」と思ってたから、そのときはしゃべる内容をあらかじめ練ってたんですよ。いろいろ考えた結果、「歌舞伎町のネイルサロンの人とこの話なら多分続くだろう」と思ったのが、お菓子の話で。

一同 ああ~。

能町 あと、そこはずっとテレビが点いてたんです。海外ドラマだかなんだかわかんないけど、テレビの音はしてて。周りにもたくさんネイリストがいて、何人か同時にやってもらってるから、ちょっと間も持つし、時々「きのことたけのこ、どっちが好き?」レベルの会話をしてたら、けっこう間が持ったんですけど。でもそこまでしないといけないのは、やっぱりつらいわけですよ。

──至近距離でその感じが続くと、つらそうですね。

能町 だからその後、ネットでたまたま知り合ったネイリストの人のところに行ったんです。その人は話が合いそうなのがわかってたから良かったんですけど、いろいろあってその人がネイルサロンをやめちゃって。だから今、行くところがなくて困ってるんです。一度、青森でネイルサロン探して行ってみたんですよ。そしたらその人は覚悟してやってるのかわからないけど、まったくしゃべらないんですよ。

ヒャダ それは覚悟してますね。

能町 私からしゃべりかけたりするけど、すぐ話が終わっちゃうんですよ。

ヒャダ それは終わらせようとしてるんでしょうね、会話を。

久保 ギャルは(施術されてる間)スマホで動画を見てるらしいですね。「すみません、ちょっと動画見させてください」みたいな感じで。

能町 割りきってるな~。多分、美容師さんのほうがまだしゃべれると思うんですよ。知らない美容室に行っても。美容師さんは直接向き合ってないから、というのもあると思うんですけど。

ヒャダ 目の前にいたらちょっときついですね。

能町 ネイルサロンに行くとしたらそれをどうにか解消したい。しゃべらないならしゃべらないで気まずいし。それで最近は全然ネイルをやらなくなっちゃったんですよね。

「2023年12月24日のこじらせライブより」